第46話

「で、どうして俺まで居る必要があるんだ」

「いいじゃん、いいじゃん。折角誰もいないんだから!ね?翡翠ちゃん」

「うん」

今日はこの練習場を使う予約もされておらず、片手で数えるくらいしかない程の貴重なEグループが使える日だ。

明日から実技の授業も始まるため、少しでも練習をしておきたいと藍水が相談しにきたのだが、断った。

その時藍水は諦めていた雰囲気を出していたので、貸切同然で呑気に一人で来てみるとこの状況、二人が待ち構えていた。

つまり裏をかかれていた。藍水に負けたことになる。

「私も、改めてちゃんと練習したい。今日は邪魔されない」

「...わかった」

そう言われてしまうと断り難い。桑原やAグループのせいで碌に練習もできていなかった。

「なになに?もう二人では練習してんの?ずるーい!」

「お前...その時俺のこと避けてただろうが」

「う...べ、別にそんなことは...ないよ?」

目があちこちに走り、視線が定まっていない。

「まあ、いい。ところで樫谷は」

「誘ったけど普通に無視されたよー」

原型もわからないような樫谷の真似「晃君の真似〜」とか言いながら無視された顛末を笑って話してくる。

「そうか」

樫谷がいたところで何か変わるわけでもないが、どうせならグループとして実技の面から昇格したい気持ちはある。

この二人より質があるといえ芳しくはない。

俺に教えられるのも癪であるだろうし、またグループが険悪に包まれる可能性も高いので樫谷なりにも考えた結果かもしれない。

「拓真君、前言ってたように実力見せてよ。どれくらい強いのか。アタシ負ける気はしないんだよね」

木刀を構えながら挑戦的にこちらへ問いかける。随分となめられたものだ。

挑発には乗りたくないが、やる気は申し分ない。絶好の機会だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る