第40話
二人とも常に授業が始まる一分前とギリギリで席についているが今日は何かあるのだろうか。
「行っちゃった」
嵐が去ったように静かになる。
何かと忙しい奴らだ。特に藍水。
時間ギリギリまで動かないのが、休憩を満喫する上で大切だ。
ふと横を眺めると、この騒がしさの中でも、いつもの場所で表情一切変えずに刀の手入れをしている透百合。
視線に気づいた、いや偶然だとは思うが目があってしまう。
普段ならそのまま顔を背けるのだが、準備を整えるとこちらへと向かってくる。
先日殆ど言葉も交わさず別れてしまったため丁度良い。
「こんちには」
「ああ」「こんにちは」
「藤桜さんと話すのは初めてね」
「名前知っているんですね...」
いきなり話しかけられたこともあるが、Aグループだということにしどろもどろとしている。
「件の出来事を調べていたときにね。ごめんなさい」
「い、いいえ」
「私の名前は透百合礼華。そんなに構えなくて大丈夫よ。同じ学年なのだし」
「藤桜翡翠です...そうなんですけど、でもAグループの方は怖いです」
「...私のグループの者たちね。あの時は見窄らしい姿を見せてしまったわね。きつく叱責しておくわ」
鞘を撫でながら目を鋭くして告げた。粛清という体で殺されかねないオーラを放っているように見える。
「...で、何の様だ?」
「歓迎されていない物言いね」
「いや警戒しているだけだ」
「警戒...?」
「俺の無実を証明してくれたのは感謝している。だが、お前が俺を助ける意味がわからない。何が望みだ?それともこれを弱みにつけ込んでくるんじゃねーのか?」
「ふふっ。確かにそうね、理由なく助けるのはおかしい」
表情を崩すと俺の右側へと姿勢良く座った。
座る時の佇まいも自然と一体となっている。
女子二人に挟まれる形になってしまい、熱が体内に循環しているようで、一刻も早く戻りたい。
狼狽えていることを悟られないためにも、平静に尋ねる。
「何を企んでる?」
「いいえ何も」
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