第36話

「少し黙ってもらえる?」

何か言いかけていたが、透百合に抑止され、口を閉じてしまう。まさに鶴の一声だ。

「実際に写真も撮っていますし」

掌中に見える写真からは桑原たちがテストの解答と鍵を持ち嗤笑を浮かべている姿が鮮明に写し出されていた。

朽葉たちは不敵な笑みを浮かべ、勝ち誇ったように対峙している。

完全に俺が優位へと立った。しかし、違和感が拭えない。写真が残っていたなら、この上ない事実。たとえEランクだとしても完璧な証拠が残っているならしんじてくれるのではないのか。

もっと早くに提示してくれれば良いのだが。

「この朽葉さんたちにも事実を述べてもらい、生徒会、校長の方へ悉皆に伝えますので、直々に処分が下ると思います」

冷静沈着に窘めるように淡々と告げる。ここまで証拠が揃えば白ばくれることもできない。向かいに立つ者の表情は見て取れないが、素直に受け止めているとは思えなく、どこか反抗の念を感じた。

透百合が抱えていたファイルなどの道具を一切机上に置くと、振り返り俺を見つめる。

ただ真正面に居るだけで口を話すことはないが、そのクールさから覗く視線は温かい。

そして徐に口を開け、

「茜澤君。これで退学処分は免れるように伝えておくわ。良いですよね?先生」

「え、それも僕なの...?」

「私が二位になるのは癪ではあるけど、不正がおこったうえで勝つのは勝利じゃない。次は勝つから」

先生の疑問に対しては黙殺し、一言俺に布告してくる。

「では私はこれで...」

「ふざけんなよ!」

踵を返そうとした瞬間、咆哮が教室を包み込んだ。

「Aグループの奴がこんな馬鹿どもを相手にする理由ないだろうが!茜澤が弱みでも握ってるに違いない!」

「私はそこまで落ちぶれては無いと思うけど」

「うるせえ!お前ら!行くぞ!」

桑原が刀を引き抜き、後ろに檄を飛ばす。

証拠を突きつけられた腹いせだろうか。

一度俺に叩きのめされてもなお襲ってくるのは感心だが、諦めが悪い。ここまで反抗してくると呆れる。

そしてここで刀を振り回されると、また藤桜たちに、周りにも危険が及ぶ可能性もある。激怒した者、我を忘れた者は行動が読み取れない。

考えている間に桑原が眼前に襲いかかってきていた。

「ああああああああ」

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