第34話
「あら?私が見た限り居なかったわよ?私たちいつもお昼時はあの裏庭で食べているから」
「あ?そうだっけ...あ、違った。金曜日のことだもんな。あん時はあれだ、図書館に居たんだ。昼時に」
「それもおかしいわね」
「どういうことだよ?アンタは裏庭にいたなら、俺たちがどこに居たかなんてわからないだろ?」
「ええ、そうね。でも明らかに間違っていることはわかる。もう一度聞くけれど図書館なのよね?」
「ああ」
「少なくとも図書館から、金庫のある部屋は見えない筈なのだけれど。私が認識しているのは唯一裏庭から多少覗くことはできる程で」
「......」
「茜澤君を見た、若しくは図書館にいた。どちらかが嘘になるけれど、前者が虚偽の発言と言うことになるわね」
「...なんでだよ」
「前提としたて茜澤君はお昼、いつも寂しく一人で裏庭に居たのを見ているから」
一言余計な事を言われたと思ったが、気のせいだとしておこう。
「いつも、そこで一人で食べていたのか」
やたらと一人を強調されて憐むような目で樫谷と藍水が見つめてくる。原因は二人にあるはずなのだが。
「あなたたちは一体どこから茜澤君を見たのかな?」
唇を噛みしめたままで言葉は発さない。
「そんなこと...お前が茜澤と口を合わせていることだってあるだろ!二人だけしか居なかったなら!」
「そこまでして私が庇う必要もないでしょう?第一私の方が上。上の者が言うことは絶対なのでしょう?」
「...それは証拠があった上でだろ!」
語調が荒くなっていく。追い詰められている証拠だ。
桑原が俺を見たというのは嘘だとわかっている。
だが確かに上の者が言っただけで、その通りになるわけではない。
俺に襲われたと傷を見せた、テストの解答と鍵が見つかった。可視できる際にどちらかが証明出来ない時上の者が有利に立つ。
「今からそれを見せましょう」
桑原とは対偶に悠々とファイルを開き、はっきりと声を発し始める。
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