第13話
日曜日、午後4時。
中間テスト範囲の総復習を二人で行っていた。
今日は藤桜に倣って初めてテスト勉強してみたが、授業中聞いていれば事足りる。わざわざ時間を割いてまで勉強する難易度ではなかった。
それでも暇を弄ぶよりは、藤桜と勉強していた方が心地はいい。
「見て?全問正解!」
「お、良いじゃん。これなら明日心配することはないな」
一番苦手である英語もこの通りだ。藤桜に至っては何も憂慮はない。
そんな考えと共に上の空で、実際に上の空を眺めていると、
「一生懸命やってんねえ。けどEグループがどう足掻いたところで無駄に決まってんだろ」
「桑原...」
現在思い出したくもない顔が眼前に佇んでいる。
「上の者には敬意を示せ、茜澤くん。今瀬戸際なんだろ?」
退学について瀬戸際のことを言っているのだろう。
薄っすらとニヒルな笑顔を向け、挑発するように喋り出す。
「稚拙な剣術で、偶然勝っただけで調子に乗っているからこうなるんだよ。素直に金でも渡しておけば良かったのに、ねえ」
「ああ。ざまあみろ」
俺たち、いや主に俺を煽り立て問題に触発させようとしている。
「茜澤くん...」
もし、俺一人の時に絡まれたとしても、黙殺すれば良いだけで平常は保てただろうが、横に藤桜がいると更に慎重に言葉を選ぶ必要がある。権力を道具に奴等の恣にされる可能性が充分あるわけだ。
「今日は何しに?」
「......いや、特に用はねえよ...」
返答が意外だったというように呆気に取られている。
すると今度は藤桜へと近づく。
「君、あの時はいきなり攻撃しようとして悪かった。一応寸止めしようとしたんだけどさ~。折角だから俺らたちと勉強でもしないか?」
「......」
「そんな怯えないでよ。どう?」
「......」
口どころか体さえ微動だにしない。だがスカートを摘んだ指先だけが小刻みに震えているのが見える。
第一、桑原の言葉が真実と言えることが怪しい。
如何にも殺そうとした目で寸止めなど出来る裁量があるとは思えなかった。
「黙ってないで...」
「悪い。お前たちとはできない」
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