第14話

「あ?茜澤には聞いてねえよ」

「藤桜の気持ちを代わりに話しただけだ。お前らも勉強したらどうだ?」

「へっ、人の心配かよ。俺は別にやらなくても点数なんて取れるんだよ」

「だからこんな男より俺たちの方がわかりやすく教えられるぜ?」

「......」

随分の自信に満ち溢れた言い方だ。

そんな桑原を横目に藤桜は黙ったまま首を横に振った。

「だそうだ。だから別の場所へ移ってくれないか?ここで固まって勉強する意味もないだろ」

「何言ってるんだ?お前らが動けよ。死にかけのEグループさんたち?」

退学を盾にされていることを考えると、食い下がるわけにはいかなかった。

「わかった。藤桜、今日はこれで終わりにしよう。時間も中途半端だし別の場所でやるのもな」

「でも...わかった」

「悪い。でも今日の実力なら明日は大丈夫だ」

「うん」

「そうだな。やったところで無駄なんだから、すぐ寝て夢だけでも見とけ」

気味の悪い笑みを向けると、何か光るものを投げてきた。

投げ渡すには随分と速いスピードに乗っけてくる。掴んだ掌中を確認すると鍵。

亀のキーホルダーが付けられており、鍵よりも大きい。

使い所が悪そうだが、この大きさなら紛失する心配はなさそうだ。

「なんだよ」

「俺の部屋の鍵だ。教えてほしいなら来ていいぞ。藤桜さんに渡しておいてくれ」

「誰が行くか。要らねえよ」

投げ返そうとも思ったが、あの不愉快な顔はこちらに向いておらず、こちらを気にも止めない様子。

一応藤桜に確認はしておこう。

「俺が持ってるから、もし行きたいなら言ってくれ」

「...いらないかな」

捨てるわけにもいかず、ポケットに仕舞うと図書室を出た。

外を見ると先ほどまでは陽気な一線が差し込んでいた空は満遍なく雲が覆いかぶさり、今にも雨が降りそうだった。

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