第二話
外に出ると天気予報の通り、雲一つない青空が広がっており、春のぽかぽか陽気に包まれていた。
「絶好の登校日和だねおにいちゃん」
「ああ、そうだな」
そんな会話し、二人並んで歩きだす。少し歩いたところで、ぼふっという衝撃とともに雨音が右腕に抱きついてきた。
「おにいちゃんに抱きつき日和でもあると」
雨音がにんまりと笑いながらそう言った。
これはどこかに出掛ける時に雨音がよくやってくることだ。俺としては外では流石にやめてほしいと思う反面、寒い冬場とかはこれのおかげで助かってるとこがあるからあまり強く言えないのが悲しいところ。
桜並木を二人で歩いていると雨音がニヤニヤと笑いながら、
「おにいちゃん、美少女JKに抱きつかれて嬉しい?」
「ほぼ毎日抱きつかれてるからあんまり嬉しいって感情は湧いてこないな」
自分で美少女って言ったことには触れないでおく。実際美少女だしな。
「……一応胸押し当ててるつもりなんだけど」
「ない胸を押し当てられてもな……」
「なっ!?ちゃんとあるから!!」
さらに胸を押し付けてくるが伝わってくる感触は硬い感触だけで柔らかいと感じることはない。
「やっぱり硬いな」
「そんなこと言う鈍感おにいちゃんにはもう抱きついてあげません!!」
そう言って雨音は俺の右腕を放した。
どうせ二分後くらいにはまた抱きついてくるだろう。
俺の予想は見事的中し、「もう無理~」と言いながら俺の右腕に抱きついてくる雨音だった。
「じゃあ頑張れよ、雨音」
「うん、おにいちゃんも頑張ってね」
そう言って三階の踊り場で四階へ上る雨音を見送ってから俺は自分の教室である二年二組に向かう。
長くもなく、短くもない中途半端な距離を歩き、教室に入る。当たり前のことだが教室に入ってきた俺には見向きもせずにクラスメイトは友達と喋っていたり、スマホをいじったりして朝の時間を過ごしている。そんな人達を横目に窓側の前から二番目の席に座った。
「おはよう友義」
前の席に座っている快斗が声をかけてきた。少し焼けた肌と一七五センチという高身長が特徴的な男で中学の時からの親友だ。あと、こいつには高一の時から付き合い始めた彼女がいる。ずるい。
「おはよう快斗」
「友義から貸してもらったラノベ読んだよ、めちゃめちゃ面白かった」
そう言って一冊の本を快斗はバックから取り出した。よく快斗にはラノベを貸しており、そのおかげか最近は快斗も少しオタク化してきている。
「どこが面白かった?俺はここらへんの所とかめちゃめちゃ好きなんだけど」
「あー、めちゃめちゃ分かるわ、そこ僕も好き」
「だよなー、あとこことかさぁ……」
「二人とも何話してるの?」
と、隣から話しかけられた。隣を見てみると茶髪のポニーテールに愛嬌ある顔立ちの少女――
その愛嬌のある顔立ちと持ち前の人懐っこさからクラスでは人気者で身長は一五〇センチ程と小さく、よく中学生に間違えられる事がある。あとさっき言った快斗の彼女というのが希だ。ちなみに雨音との仲はものすごく良く、たまに二人でどこかに遊びに行っているようだ。
「ラノベの話だよ」
そう快斗が答えた。
「へぇー、友義、私にもなんかラノベ貸してよ」
一年間快斗にラノベを貸し続けているが、希が読みたいなんて言うことは今までなかったため、少し感動した。
「いいけど、今は途中のやつしか持ってきてないから明日な」
「うん」
「希はどんなジャンル読みたい?」
「うーん、ラブコメかなぁ」
「ラブコメなら雨音の方が持ってそうだな、オススメのやつ雨音から貸してもらってくるよ」
「それなら今日、友義の家行かせてよ、見て選びたいから」
「あー、今日は無理だな」
俺は希にケーキ屋に行くことを話した。
「なるほど今日ばデート゛するから無理なんだね」
ジト目で「このシスコン」と、語りかけてくる希。
ここで勘違いして欲しくないのだが、俺はシスコンではない。今朝のだって、兄として当然な事をしただけだ。妹が甘えてきたらそれに応える。それが普通だと俺は思っている。
「一応言っておくがデートじゃないぞ」
「へぇー」
それでも信じられないのか、ジトーっと希は疑いの目を向けてくる。
「まぁまぁ、そんな目を向けないであげなよ希」
流石、快斗。俺が雨音とデートする訳じゃない事を分かってくれている。こいつと親友で良かった。
「友義は恥ずかしがり屋なんだから本当はデートだけど恥ずかしくて言えないんだよ」
前言撤回。こいつも俺の事をいじり倒すつもりだ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。
「ちぇー、もう少し友義で遊びたかったのになぁ」
希が残念そうに、声を上げた。
「もう、友義たちが羨ましいから快斗、今日は放課後デートだからね」
だからデートじゃないってのって否定しようと思ったがそれをするのもめんどくさいなと思い、言わない事にした。
「僕に予定がある事は考慮してくれないんだね?」
「今日は何も予定が入ってないの知ってるから言ってんの」
希が頬を少し赤らめながら言った所で先生が入ってきた。
ナイスタイミングだ、先生。なんせ、これ以上この会話を聞いていたら甘すぎて砂糖吐くところだったからな。
「はい、号令ー」
「起立、気をつけ、おはようございます」
「「おはようございます」」
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