ゆーちゃん

俺の家に来いっ!


そう潤に言われてから、早いものでもう放課後。

生徒会は体育祭の決まりを決めるらしく、3年生のみの参加だ。

航太先輩には迷惑をかけるけど休みになってくれてちょうどいい。


楽しみだ……


優雨のこともだけど、友達の家に上がるってことも1つの楽しみ。

随分久しぶりな気がする。


家に帰らずそのまま3人で潤の家へ向かう。


どうやら潤と優雨も市民ホール側に住んでいるらしい。

なんか嬉しいな。

さっさと当番である清掃を終えると、玄関へと向かう。



優雨はすらっとした体でめいっぱい背伸びして手を振り、潤は腕を組みながら待ちくたびれた風を装っている。

はぁ……はぁっ、と息を吐き出しながら優雨に謝罪する。


「ごめ、優雨。待ったか?」

「ううん、ぜんぜ……」

「おう、それはもうスーパーウルトラハチャメチャ待ったぜ!」



分かりやすく眉根を寄せたあと、今度ははぁ、とため息を吐きながら潤に言う。



「お前ごみ捨て俺に押し付けて走って帰っただけだろっ!!!」

「はは、すまん」



非常にけしからんな事だが寛容なので許してやる。

スーパーウルトラハチャメチャ寛容な俺だからな。


そして道中くだらない話をして歩くこと10分。



「お、着いたぞ。ここだ。」

潤の赤い屋根で周りは花壇で囲まれているファンシーな家に着くと、靴を揃えてあがらせてもらう。





「ただいま、かあさん。」

どうやら潤の母がいるらしいのでご挨拶。

「「お邪魔しまーす」」

「はーい」

母親らしき人の返事がきこえ部屋へ向かおうと階段へ足を伸ばした時。





スタタっトンっと軽やかな足音が聞こえて、階段3段目から可愛らしい女性が飛び降りてくる。




「ん?潤どしたの友達なんて。久しぶりね。」


「ああ、オフの時にわりーな。ねーちゃん」

「いよいよ、それで?そこの2人は。」


突然の登場に、驚くまもなく自己紹介する。



「紺野 秋です。今日はお邪魔させて頂きありがとうございます。」

「あら、丁寧。以外ね、潤の友達なのに。」

「どういう事だよっ!」

むくれる潤を宥めつつ優雨に挨拶を促す。




「優雨です、あ、沙苗……よろしく」

「あら、かっこいい……ね、うちの事務所に興味無い?」

「え……」

事務所ってなんだ?優雨はなんだか分かっていそうだったけど絶句していてそれどころじゃない。


「ちょっとねーちゃん、いい加減にしろよ」


「ごめんね?潤の友達来るなんて久しぶりで。」

微笑むお姉さん。


「じゃ、私も挨拶しよっかな。CreamPuffのベリーです。よろしくね〜」


そういってパチンっ!とウインクするとツインテールが左右に揺れたベリー(?)さん。

一瞬目を奪われたけどふるふると頭を振ってそんな考えを打ち消す。



「ちょっと、普通に挨拶できないわけ?」

「もーう、いいじゃん、はぁ。

改めまして山野 苺です。よろしくね」



あまり理解できないけど多分お姉さんは……


「潤……のお姉さんは……CreamPuffっていう超人気アイドルグループの……センター。ベリーちゃんなんだ……」



「そういう事だ。」


よくわかんないけどとりあえず頷く。

道理で如月と同じくらい可愛いのか。



「で、潤。私がいる時にわざわざ連れてきたってことは?」

「あぁ、“あの部屋”使わせてくれ。」

こっちに向かってニヤッと微笑む潤。



なるほど、だから出来るのか。

話を聞いた時は大丈夫か、と思ったけどこれなら安心だ。



「おっけー!いいよ、はい鍵。」

そういってピカピカの銀色の鍵を潤に手渡す。

こっちを向いて首を傾げる優雨に、さも分からない様子で傾げ返すとんー、と言われる。

こういうことしてっから可愛がられんのわかんないのかなー。

くせっ毛混じりなのにサラッサラの髪をワシワシしたい衝動をこらえる。


だってー。




「よし、いくか!衣装部屋!」


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