秋雨トリオ
「次ー!歌う人いる?」
そういって金髪のツインテールを左右に揺らしながら、マイクを高く突き上げるのは如月を取り囲んでいた女子の1人、諏訪さんだ。
学級委員長を務めていて元気な性格から、かなり男子から人気があるらしい。
だが、もしかすると先程の歌唱で人気が下がったかも……などと失礼なことを考えてしまうくらいには悲しい感じの歌唱力だった。
こう……なんというか、某アニメの暴君みたいな……その、うん。
大迫力で泣けてきたな!
歌ってた曲はなぜかオペラだったんだけどな。
しばらくして誰も歌わなかったため、また諏訪さんが歌おうとすると、必死に阻止するため山野が歌うことになる。
案外上手くてびっくりした。
その次はまたまた如月を取り囲んでいた子の1人。黒髪メガネの静かめな女の子、沢野さんが歌うことになった。
と、またもや間をぬって話しかけてくる優雨。
「あの、さ。紺野くん。」
「ん。」
「秋って……呼んでいい?僕のことも……優雨って呼んで。」
「え、わかったよ。優雨。」
突然のことに若干戸惑ったけれど、なんだか仲が縮まったようで嬉しかったから了承する。
すると山野までも
「俺も俺もっ!優雨がいいんだったら俺も秋って呼んでいい?俺のことも潤って呼んでくれよ。」
「いい、けど……」
優雨よりも前から仲良くしてもらってたからそんなの全然構わない。
むしろなんで今さらなんだ、と思うくらいだ。
「やった!秋。お前ほとんど生徒会いっててつるむ機会なかったかんさ。仲良くなれたみてーですっげー嬉しーっ!」
そういってにぱっと微笑む潤につられて笑うとず……るいと優雨に言われ、頬を引っ張られる。
「おやおやぁ〜?嫉妬かね?優雨」
すかさずからかう潤に優雨がほっぺをつねりながら反抗する。
そのせいでほっぺを掴む優雨の手に力が籠ってしまい「い、いひゃいよゆひゅ」
と言うも無視されてしまう。
痛いんだけど……
「うるさい……潤。何が悪いの。」
と、優雨が言った直後に諏訪さんが痺れを切らして話しかけに来る。
「ちょっとー、そこの秋雨トリオ全然歌ってないじゃない。」
なんか変な名前で呼ばれた……
微妙に顔を顰めて由来を聞いてみると俺の秋と、優雨くんの雨。雨が降ると潤うから秋雨トリオでいいやってことらしい。
よくこの短時間でこんな名前考えついたな……と少し感心する。
潤だけ名前が入ってないのはちょっと可哀想だけど。
「ごめん、どうする誰か歌える人いるか……?」
自分が歌いたくないという申し訳なさから、自然としりすぼみになった俺の問いは最後まで言うことなく遮られる。
1人の男子の決意の籠った眼差しによって。
「僕……歌う」
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