カラオケ店 with 1ーA


はぁ……ついにバレちゃったか。


如月のことだから気を使ってきそうだなと思って黙ってたのに。

実際気使われちゃったしな。

失敗、失敗。


実は引っ越したとか言っとけばよかったかな笑

けど、そしたら如月とまた一緒に帰れなくなるからなぁ……

反省しながら歩いていると、ものの数分で家に着く。

ほんとに近いから別に送っても問題ないんだけどな……。





アパートにしては、小さいが部屋がいくつもあるのが俺の家の特徴だ。

そんなこじんまりした部屋のひとつ、リビングから隣の部屋のクローゼットまでは徒歩3歩くらい。

ただの白いパーカーにスキニーを履いて使い古したリュックを背負い家を出る。

俺よりも家が近い人もいるだろうから待たせないようにしないとな。


自転車に豪快に股がってカラオケ店まで着くと、おおよそ半分くらいのクラスメイトがすでに集まっていた。


「おお、紺野。よく来た!」

そう言って手を上げる山野。

指定のジャージを着ていて、もはやオシャレとかは潔い感じだ。



しばらく山野と雑談をして残りの人たちを待つ。

きょろきょろと当たりを見渡すとたった今如月が来たところだった。

「あの……遅れてすみませんっ!!」

そういって自転車からフワッと降りる如月さん。

数名の男子が息を飲んだのもうなずける。

琴先輩以上だ。

いや、比較したらどっちからも怒られるかもだが……、


いつものポニーテールに黄色いワンピース。

真っ白なカーディガンも合わせていて、女子のファッションに詳しくない俺にも如月がかわいいってことは本能的に理解できた。

また今日も真っ赤なミサンガをつけているけど、大切なものなのかとつい考えてしまう。


自転車から降り立つとすぐにクラスの女子に囲まれる如月。


「うわっ!!可愛いよ〜如月さん!」

「うんうん!いつもよりめちゃくちゃ可愛い!」

「服変わるとイメージ変わるね!」

「あ、あわ……ありがと。」

如月がテンパっているのを見るのは新鮮で少し驚いてしまう。


「お?」

少しばかり見ていると脇腹を山野に小突かれる。

「見蕩れてるって感じ?」

「い、いやぁ……」

見ていたのは事実なので、思わず言葉を濁す。

「別に如月に見とれてたわけじゃ無くて……」


「あれ?」

途端にしてやったりとにやりとする山野とその他の男子生徒。

「誰かなんて言ってないよ?」



にやにやして、してやったり顔をしている男子たちの目を見て分かってしまった……

あぁ、これはカラオケ中問いただされるな、と。


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