謝罪会見?
「はぁっ……はぁ」
俺自身何が何だかわからぬまま、メ□ス並みに走り続ける。
いや、それほどでもなかった。
ごめん、メ□ス。
俺には親友の命はかかってないんだ……
とりあえず良かった、万が一のために校内の地図を覚えておいて。
けっこー大変だったんだよなーあれ覚えんの。
無駄に?敷地広大だし。
階段を駆け下り放送室に入ると、顔面蒼白といった様子の如月が待っていた。
「はぁ……きさ、らぎ、っ…」
息も絶え絶えと言った様子で声をかけると、ペコペコしながら何やらカメラに向かって早口でまくし立てる。
「ただいま到着しました、副会長の紺野 秋くんです。こちらの手違いにより時間を伝え忘れお待たせしてしまい、大変申し訳ございませんっ!ただいまより副会長からのお話とさせていただきますっ!」
そう言って俺にマイクを差し出す。
そしてカメラの後ろ側に回ると……
“ほんとにごめんなさいっ!”
そう書かれたカンペが出された。
とくに何を言ったら良いか分からないため、カンペをこっそり見る。
人生で1回でも実際にカンペ見る機会あるんだなと息も絶え絶えに考えながら。
“とりあえずこれを読んでね”
書きなぐっていても整った字に、肩で息をしながら頷いてみせると安堵したかのように如月は微笑んでカメラマンは首を傾げる。
“この度はお待たせしてしまい申し訳ありません”
カンペにかかれたことを、わけも分からぬままただひたすらに読み上げてお詫びする。
段々と息は整ってきた。
“今年度より小鳥遊高校1年副会長を務めさせていただきます、紺野 秋です。よろしくお願い致します”
って……は!?
思わず口から出そうになった悲鳴を必死に抑えてカンペを読み上げる。
さっきの驚きでまた息が上がってきた。
意味がわからず思わず如月を軽く睨む。
“ほんっとーーーにごめんなさいっ!”
ーが伸びすぎてカンペを埋めつくしそうになってるなーと悠長に考えながら次のカンペがくるまで適当な話で間を持たせる。
“皆さんに明るい学校生活を送ってもらえるよう、生徒会役員共々頑張っていきたいと考えております。ご清聴ありがとうございました。”
やけに堅苦しい挨拶を終えて斜め45°頭を下げる。
校長が挨拶をして締めくくったあと教室のあちらこちらからまばらな拍手が聞こえ、最後にカメラが校長の滑り落ちたズラの方向を向いて無事にHRは終了した……
ちっとも無事じゃねーよっ!!!!
角野卓造じゃねーよー的な脳内ノリツッコミを終えたあとの俺は、動画が止まったのを確認したあと如月に掴みかからんばかりの勢いで駆け寄る。
「これ、どういうことっ!?」
肩をいからせて声を上げる俺を前に、如月の体がびくっと一回り小さくなったように見える。
若干の怒りは残るものの可哀想なので手を離すと涙目で謝られた。
あ、掴みかかってたわ、勢いじゃなくて。
「ご、ごめんなさい……」
「ごめんはいい、もう。で、どういうことだよ?俺が副会長だなんて……」
早急な状況把握をするため如月を問いただす。
「えと、その、」
「ここちゃんを責めないでほしいな?」
そう優しく如月の頭を撫でて割って入ったのは1学年上だろうか、俺より少し背が高く、腰まである驚くほど長い黒髪の女子生徒だ。
「あの、話が見えてこないんすけど……」
「花梨、ありがとう。改めて紺野くん。すまない、これに関しては僕の不手際だ。」
「でも……っ!五十嵐先輩!」
「えーっと、?」
まだまだ話が見えてこないのに名前ばっかり出てきて多少混乱する。
えーっと、今如月の頭を撫でている長い髪と豊満な……コホンっ。
をお持ちになられてるのが花梨先輩(?)で、俺の目の前にたっているキラッキラしたオーラを放ってる先輩が五十嵐先輩と言うらしい。
教頭とかがよくやるような仕切り直しのような雰囲気を出して咳払いをした後、五十嵐先輩が続ける。
「まず、紺野くん。この学校の決まりは知っているかい?」
「は、はい。大体は。」
基本的に決まりは地図と一緒に覚えたから大丈夫なはずだ。
もしかして、俺なんかやらかしたか?
不安に駆られながら五十嵐先輩の次の言葉をまつ。
「ところでだ。紺野くん。君は新入生次席なんだよ。」
「え……」
今知ったトンデモ事実に体を硬直させる。
なんか入試簡単だなー、とは思っていたがそれほどとは。
いや、マウントじゃないぞ?
決して。うん。
今の話になんの関係が、と昨日と同じくらいはてなマークでいっぱいにな…………
「あっ!!」
瞬間ひとつの決まりが俺の頭をよぎる。
「思い出してくれたかい、紺野くん。さすが次席なだけあるね。」
あることに気づいてしまった俺は、若干震える声でその決まりを口にする。
「入試で首席又は次席の成績を収めたものは、本校の生徒会に属することを決定事項とする……っ」
「さすがだね〜♪あっき〜!」
そう言ってにこやかに笑う花梨先輩。
けど、どうして急に?
花梨先輩の急にフランクになった呼び方を気にする余裕が無いほどそう考えていると、頭の中を読んだかのような速さで五十嵐先輩が答える。
「その点はほんとに済まなかった」
「い、いや五十嵐先輩っ!!私が」
焦ったように言う如月。
「後輩の責任は僕の責任でもある。ほんとに済まなかった。紺野くん」
「ごめんねっ、紺野くん」
「い、いや……」
「私から説明します。五十嵐先輩」
「いや、僕が」
「これは私の責任ですので」
「き、君がそう言うなら。」
決意の籠った如月の目を見て、最終的には折れておずおずと引き下がる航太先輩。
「あのね、紺野くん。私先生から紺野くんが次席で生徒会に入ること知ってたんだ。今日の朝教えて貰って。なのに伝えるの忘れてて!自分だけ放送室に来ちゃってほんとごめん……気づいた時には私もう出番だしで慌てちゃって。」
ほんとごめん。そういって頭を下げる如月にもういいよ、といって状況を整理する。
とりあえず俺が入試次席で放送に副会長として出る予定だったんだけど、それを伝え忘れてたってことか?
整理してみると簡単な事だった。
ところで、ここにいる人達は、
話の流れから薄々わかっているものの一応聞いてみる。
「あの、先輩方って……」
「あぁ、自己紹介がまだだったな。一限まで時間も無いし放課後でも良いだろうか。生徒会で集まりがある。」
そういう五十嵐先輩に頷いて見せたあと、如月さんと二人で教室に戻る。
「あの、ごめん、ほんとに」
「いいよ、誰にでもミスくらいあるだろ?」
「けど……」
尚も言い募る如月の頭をできる限りやさしく撫でる。
「っ……!?」
「あ、ごめん、嫌だったよな」
「いや、では……」
「でも、ほんとに気にしてないから。」
そういって精一杯の笑顔で安心させるためにかっと微笑んでみせると困ったように笑われた。
「ほんと……そういうとこは変わんないか……」
「ん?」
「いや、こっちの話。じゃ、教室入ろっか。」
「おう」
頷いて見せたけどさっき如月が呟いたの、なんだったんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます