先生!廊下は走ってもいいですか!?

「おはよっ、紺野くん」



隣の席の女の子から軽やかに声をかけられる。

昨日僕に告白してきた子だ。

いつの間にか紺野くん呼びに変わっている。

進化したのか……いや、名字呼びだから退化か?



「おはよう。えーと」

「あはは、まだ名前覚えてないよね?私、如月きさらぎ 虹湖ここって言うの。昨日はごめんね?」



そう言って笑う彼女の名前にどこか既視感を覚えてしまう。

頭に唐突に浮かんだモヤを振り払って、できるだけ笑顔を心がけて話しかける。

女子に話しかけるなんて初めてで、緊張で何度も噛みそうになった。


「じゃあ改めて、お、おはよ如月。

昨日は俺こそごめんな。君のことまだよく知らなかったからさ。」


そう言うと、なぜだか痛みをこらえるように唇を噛んで俯く如月。



「その……大丈夫か?どこか痛いのか?」



思わず心配になってそう声をかけ顔をのぞき込むと、ううんっと笑って廊下に出ていってしまった。

なにか、気に触ることいったのかも、俺…。

ううん、考えても仕方ない。

帰ってきたら謝ろ。

そう心に決めて俺は自席にて、HRが始まるまで待つのだった。


ーー

「よし、これから生徒会長と副会長の発表があるぞー。」

威勢の良い声でHRの始まりを告げる熱血担任。


教室にあるテレビの電源をつけると同時に教室を見渡し、首を傾げた。

誰を見ているのかと思い俺があたりを見渡すと、俺の付近に指をさされる。


もしかして、と思いながら自分の方に親指を向けると豪快に頷かれた。



「そうだ、お前だぞ?紺野。お前まだ行かないのか?」

さも不思議でたまらないといった様子で疑問を口にする先生に、こちらも首を傾げて疑問を返してみる。


「どこに、ですか?」

「如月はもう行ったぞ?もう放送始まると思うが、もしかして聞いてないのか。」

「なにを……ですか」


なんとなく背筋に悪寒が走る。

本能的なものだろうか。

恐る恐る、といった様子で先生に聞くと


「とにかく急げ!急いで放送室に向かうんだ!」


なぜだかとても焦っている様子で俺はあれよあれよという間に教室から追い出される。


「走れ!紺野!」

「え、」

「いいからはしれよっ!話は後で如月に聞け」

「は、はぁ……」

よく分からないまま俺は先生の圧力に押されて頷いてしまう。


教室からの視線が痛い、、

入学早々目立ってしまったとガックリしていると、ふと疑問に思う。



「先生!廊下は走ってもいいですか!?」

「おう!」



いいらしいので、全力で走ろうと思う。



⚠良い子はマネすんなよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る