第3話  ラグナス・ヴィンセント


 ラグナス・ヴィンセントそれが僕の名前だ。

 この世界は九つの天界と一つの下界で構成されている。

 僕はそんな世界を渡り歩く冒険者と言う職業に就いた。

 名を上げるべく15歳の時に同郷の仲間の弓使いのエイミィと魔導士シルルに法術師のサティそして親友の戦士ブルーノの五人で冒険者の街クリミナルへと旅立った。


 各世界へ渡るにはワールドウォーカーと呼ばれる上位の冒険者にならなければいけない。

 その為に僕達は冒険者に寄せられる依頼を沢山こなした。

 幼い頃から一緒に居た僕達は息もぴったりで5年経つ頃には上からAで下がGまである冒険者ランクの内Bランクまで上がる事に成功していた。


 だがそんな順風満帆な僕に悲劇が襲った。


 黄金のケビンと呼ばれるワールドウォーカーの冒険者が僕達に自分達のクランつまりチームに入れと強要してきたのだ。

 僕達は自分達の手でワールドウォーカーを目指すと決めていたしケビンと言う男の脅すような強引なやり方は気に入らなかった。

 それにやらしい目でエイミィを見つめていた為彼女も凄く嫌がっていたというのもあった。

 そんな風に僕達はケビンの誘いを断りながらも冒険者として日々依頼をこなしていた時だった。


 ケビンの勧誘が始まってから半年が経過したころのある日の事、エイミィとブルーノの三人で出かける約束をしていた時の事だ。

 ブルーノが集合時間になってもやってこなかった。

 余りにも遅い為僕が彼の部屋を確認しに行くとそこには剣で串刺しにされ無残な姿になったブルーノが居た。

 僕が呆気に取られている間にケビンが現れ僕を組み伏せ犯人逮捕だと大きな声で叫んだ。

 その後あっという間に僕は後からやってきた兵士に捕まり裁判にかけられることになったのだがそこで更に驚くことが起こった。


 兵士や裁判官は状況証拠をケビンにでっち上げられた為僕の話を聞いてくれずに有罪で話が進んでいた時の事だ。

 証人としてエイミィが来てくれたと言う話を裁判の休憩時間の控室で聞いた僕は助かったと希望を抱いた。

 幼馴染であり婚約者でもあるエイミィは僕がブルーノの部屋へ行く直前まで一緒に居た為犯行が不可能である事を証明してくれると思ったからだ。

 しかし裁判所に現れたエイミィはケビンの腕を組んで現れあろうことか僕が犯人であると言い放ったのだ。


 その時彼女の冷たい目とケビンの薄ら笑いを見た僕は僕の中で何かが壊れる音を聞いた。


 僕はブルーノを殺した罪として下界にある採掘場へと奴隷として連行された。

 親友を亡くし最愛の婚約者に裏切られた僕は全てに絶望し人形の様に命じられるがままの奴隷生活を送っていた。


 そんなある日採掘場に見た事もないような美女が奴隷として連れて来られるのを目撃した。

 珍しい事もあるんだなと思い彼女の方を見ていると目が合ったがボーっとしていると監守にどやされるので作業に戻る。

 彼女の顔に何処か既視感を覚えたが僕はそのまま考えるのをやめ作業に専念した。


 次の日に事件が起きた。

 昨日やって来た美女ががどうやったのか分からないが拘束具を外し監守を次々と倒し始めた。

 監守達も抵抗したが彼女の実力は高く元Bランク冒険者の僕から見ても目を見張るものがあった。

 大勢いた監守も次々と倒れ一段落ついたと見た彼女は僕に近づくと言った。


 「貴方を助けに来たわ。詳しい事は後で話すから今は手伝ってちょうだい」


 そういうと僕の拘束具を解錠し武器を渡してきた。

 その後直ぐに異変に気付いた他の監守達がやって来たのだが謎の美女と共に打倒した。

 彼女が魔法なんかも使っていた為騒ぎを聞きつけた監守達が次々にやって来たが途中彼女が解放した他の奴隷たちの助けもあって倒す事に成功していた。


 そして最後と思われる奴隷を引きづって来た監守の男が倒れたのを最後に僕達はこの場を制圧したのだった。

 

 謎の美女が最後に連れて来られた奴隷に声を掛けると男は笑いながら返事を返したのだが僕にはその笑顔がなんだか凄く心に張り付いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る