第4話 Will the HERO stop?

「星野博士、確認ですが、彼女がこの仕事をしたいといったのですか?」


かなり棘のある言い方で、明らかにおこってるなぁー


「うーんそうですねぇ……真衣ちゃん、やりたい?」


「え、あ、いやぁーそのー」


「はぁ、聞いてないんですね、これは問題ですよ、今回はなんとなりましたが、本人の意思はこれからの活動に響きますから。それで、もう1度聞きますが、あなたはこのままヒーローという非常に危険な仕事を続ける意思はありますか?」


急にそんなこと言われても、そんな答え用意してないし、


「真衣はなんで出動要請に応じたの?」


後ろから歩いてくる康太君が話しかけてくる。


「それは……その時は流れでだったけど」


「それでも、それは断ることもできたはずだ、でも断らなかっただでしょ?」


「うん、何が起こってるかはわからなかったけど、でも行かなくちゃって思って……」


そうだ、考えてみれば、あの時は『行かなくては』と思ったんだった。


「そうですねぇ、では改めて。神谷真衣さん、あなたの担当刑事、武村が問います、あなたはこのままこの『仕事』を続けていきますか?」


「ハイ、私にできることがあるなら、ヒーローとして働きたいです」


「はぁ、では続ける意思があるということで、今回はおとがめなしということで」


「ありがとうございますぅ」


星野はいつもどおり他人事か。


そんなことは気にせず、武村さんは続ける。


「それでは、本来の仕事に戻りましょうか。真衣さん、あの場所で何があったのか、何が起こったのかを聞いていきましょうか」


「それについてですが」


康太君が声を出した。


「彼女は口下手で、あまり細かな説明ができないとこちらで判断し、スーツで記録したデーターのすべてをお渡しします。そちらのほうが効率もいいですし、わかりやすいかと」


「そうですね、そちらのほうが良いですね……では、後ほどこちらのメールアドレスに送っていただければこちらで確認します」


星野の携帯端末が光り、確認すると「それでは」といい、武村さんは立ち去ってしまった。


「終わったか? 話」


神崎さんが管制室に入ってくる。


「ああ、終わったよ」


「どうだった? 嬢ちゃんはまだ続けられそうか?」


「うん大丈夫、それで、豪は何の用なの?」


「あぁそうだ、嬢ちゃん」


急にこちらに振り向き近寄ってくる


「な、なんですか?」


「あーいや、携帯端末、貸してくれねぇか?」


「あ、はい」


ポケットから端末を取り出し渡す。


「おお、こいつぁいい。嬢ちゃんのためにブレスレット型のデバイスを考えてたんだが……これって、アイロット19だよな?」


「そうです」


「じゃぁついてきてもらっていいか?」


そう云われついていく。


ついていった先は研究室というより作業場といったほうが良いかもしれない場所だった。


「で、何をするんですか?」


「ああ、今からこいつに拡張デバイスをつける、そしてこいつを使えるようにする」


「それって何ですか?」


それはブレスレットのような見た目をしていて、普段使いできそう。


「こいつぁ、遠隔でヒーロースーツを呼び寄せられるっていうのと、このスマホと連携していろいろ操作できるよっていう代物だ」


「でも、これにはディスプレイがついてないじゃないですか」


「まあそこは使ってみればわかる」


渡されたブレスレットをつけてみると、目の前にホログラムが映り、そこにはスマホの画面が表示されていた。


「すごい……」


「だろ? そして、その本体の掌の方にボタンがあるだろ? 押してみな」


押してみると、目の前にロボットが出現する。


「え?」


目の前のロボットから気の抜けた声がする。


「こんな風に、テレポートしてくるんだ、こいつは人間相手だとまだ危険だから移動とかはできないけどな」


「す、すごい」


「こいつをお嬢ちゃんにやるよ」


「いいんですか?」


「オウよ」


「あのー僕そろそろいいですか?」


ロボットで表情はわからないながらすごく居づらいように言う。


「おお、大丈夫だ」


「じゃぁ失礼して」


そういって作業場から出ていく。


「じゃぁ私も__」


「なぁ嬢ちゃん、テセウスの船って知ってるか?」


「いや、知らないですけど」


「そうか、じゃぁおじさんのおせっかい程度にとらえてくれ」


「ハ、ハイ」


「テセウスの船っていうのは、思考実験だ、俺はAIの研究もやっててな、康太ベースのAIを作ったのも俺だ、それでよく考えるんだが……この思考実験は、簡単に言うとすべてのパーツが入れ替わるとそれは元々の物と同じなのかっていう思考実験だ」


「へ?」


「ああ、わかってなさそうだな。それじゃぁ少し話をしようか、昔、テセウスっていう人がいたんだ、その人は船を持っていて、それをテセウスの船 といった。それを使って航海をしていた。ここまではいいかい?」


「はい、ここまでは」


「じゃぁここからだな、船はどんどん劣化していくだろ、だからパーツを変えていく、そうすると、すべてのパーツを置き換えることになるだろ、その時の船はテセウスの船といえるのかっていう思考実験だ」


「わかりやすかったです」


「それでだ、お嬢ちゃんはこれについてどう思う?」


「どう思う……私は、それは違う、元のテセウスの船ではなくて、新しいテセウスの船だと思います」


「そうか、俺も嬢ちゃんと同じみたいだ。じゃぁ嬢ちゃんは康太のことはどう思ってんだ?」


「それは……」


ストレートに言われて思考が停止する。


「いや、嬢ちゃんには少し酷だったか」


でもやっぱり考えなきゃ。


「いえ、私は、彼のことを本物のように接していましたが、どこかで違うものだと案じていたのかもしれません」


そう、私のことも……? 私のことも?


「そうか、そうなのか、やっぱり嬢ちゃんには酷だったな。ん? どうした嬢ちゃん、難しい顔して?」


「あ、いや何にも」


今、なんだ私は、私のことを違うものだと感じた? いやでもそう感じたし、そう考えた私は本物なのだろうか?




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