第144話 先手を取られていた

「判った。じゃあ、刻印の力を使ってウリエルさんの負担をなくすから取り敢えず見てよ?」


「うーん、あれ?」


 珍しくウリエルが焦っている。


「ゴブリンがいない……コボルトは……小都市に逃げ込んでいるみたい」


 それを意味するのは。


「べリアスの阿呆が。しくじったな。ソドムの大領域はほぼ死の王に把握されたとみて良いな」


「数日でソドムが崩壊したと?」


「あり得ん様で事実だな。それで死の王はどこにいる?」


「コボルトの逃げたしょーとしにこもっているみたい……なにかたいほーみたいなのがみえるよー」


「してやられたわ。ルクスやドラグーンが本領発揮出来ない地点に陣取りおった。我々に挟撃させようと言う魂胆だろうが、罠だ。コボルト共に不和が起きる」


 コボルト族を生かし、ゴブリンのみ死を与える。大同盟に亀裂を起こすには十分効果的だ。


 これではエルフ族もドワーフ族も味方しないかも知れない。


 死の王の本心がいかなるものであれ、コボルト族を生かしたと言う意味合いは大きい。


 彼も又士師たる資格を持ち得る可能性が出て来た。アーサー達の思惑と一致する可能性があると言うことだ。


「参議を開かねばなるまいな。至急、エルフ、ドワーフの王共を呼ぶ。ルクスもこちらにおいで願おうか。ドラグーンの長もな」

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