第118話 天使は裏を読む

「食べたことがあるのですか?」


「ない。だから楽しみだ。いつも魔法で見ていただけだからな」


 恐ろしい王だなあ。五百年間露見しないで二つの文明を見張っていたと告白しているのと同じだ。


 うん、コボルト族が虚飾の神として恐れた理由も判るものだ。


 ほーんと、凄い魔法ばかり使う。


「まあ、ウリエルさんのいるところは大体判るし、大丈夫ですよ」


「ほう、ウリエルの行動を読むか……ふむ、中々どうして、いや、良い」


 風呂から上がった後、予想通りにウリエルは蜂蜜のチーズ焼きを貪っていた。


 忙しなく働く料理人が可哀想だった。なので、引きはがすことにする。


「ウリエルさん、エルフとドワーフの国に行こうよ」


「ほえ、なんで?」


「蜂蜜ばかりで飽きたろう、とファルマコ殿がな。エルフの国なら花蜜もあるだろうし、良いだろう。ドワーフの国にも蜂蜜酒位はある筈だ」


 ウリエルがジィッとこちらを視ている。


「うそだね」


「何が?」


「おごるつもりじゃないよねー。しさつしたいこころがみえみえ」


「まあ、これから共同戦線張る国の実態を視ておくことは大切だと思うよ。でも、ウリエルさんだって蜂蜜ばっかりじゃ飽きるんじゃない?」


 「んー、花蜜もおいしいもんね。ウリエルいくー」


「奇跡は使わんで良い。我の魔法で行く。ウリエルは最終戦力だ。こんなことで消耗させる訳には行かん」


「わかったー」


「では」


 次の瞬間、景色が変わった。

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