第109話 天使の威厳
「先に上がります」
逃げる様にして脱衣所に行き、着替えて外の景色を見る。
美しい景色だ。これがいずれなくなる。実感が湧かない。
「ファルマコ」
声をかけられた。ウリエルだった。
その姿はいつも穏やかな雰囲気と違っていて真摯に満ちた天使らしい威厳だった。
「メランコリアさんを殺したくない?」
「当然だよ」
「でもね、ベリアルがこの世界をこわしてでもなしとげようとする何かがあるならウリエルは止める」
「何で? ベリアルとはそんな悪い仲じゃない気がしたけど……」
「主がそれを望まれる」
止めてくれ。十字軍の掲げた目標は恐怖と破壊をイスラム世界にもたらした。別に十字軍が悪いとかそういう話じゃない。
生命は母性と共に凶暴性を持つ。それは極めて危ういもので信仰すら歪めてしまいかねないものだ。
同じ様にウリエルも破壊の化身になるつもりだ。それはクリストティノスの目指す道ではない。
たとえ、多くの過ちを犯したとしても最後には橋をかけるのがクリストティノスの使命の筈だ。
「刻印をうまくつかうよーに」
「うん?」
何だかいつもの雰囲気に戻りつつある。刻印を使えば最悪の事態を回避出来るというのかな?
刻印か。一度も使ってない十字架の模様があるなら四回は使える筈だ。ウリエルも四回と言っていた。
「いうことはいったよー。あとはファルマコのかくご」
強大無比な死の王と向き合えと言うことか。
そう言ってウリエルはどこかに行ってしまった。
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