第102話 世界の真実
「うむ、そちらの世界ではファウストとして知られているらしいな」
やはりか。マルティン・ルターが忌み嫌った学者だ。錬金術を極めたなどの逸話があるが、実体は謎に包まれた伝説上の人物。
後にゲーテがモデルとして描き出したことで伝承の中で格別の存在になった。
「トマス・ミュンツァーの説も捨てがたかったですが、彼は過激でも正義感溢れる敬虔なクリストティノスだ。コボルト族を迫害する訳がない」
「それでこの虚飾の神に何か求めるものがあるのか?」
「過去の歴史を知りたい。五百年前に何があったのか」
「その前に我の正体にいささかの誤解があるから解いておこうか。我はお前と同じ『創られた者』だ。『創り主』はゲーテだ。ここから話はややこしくなるぞ。良いか、刮目して聴くが良い。まずは『ファウスト』の結末を知っているか?」
「ええ、メフィストフェレスの誘惑に負けたあなたでしたが、愛するグレートヒェンの祈りのお陰で天国に召される。確か、そんな結末だった様な」
「おおよそ正解だ。グレートヒェンと我は恋仲だったのだが、割り込んだ者がいたのだ」
「まさか……」
「そう、ベリアルだ。我に惚れたあ奴は並列世界の一人であった我を連れ出し、歴史を改ざんしおった……我の設定もいじってしまってな。新婚旅行のついでにこの世界に立ち寄ったのが運の尽きよ。たまたま、ゴブリンを助けてしまってな。彼らから英雄扱いよ。我はゴブリンに知識を与えて自立してくれれば良かったのだが……」
「欲をかいた種族が逆に迫害を始めた訳ですか」
「そう、そこから我は解決策を図る為に、分かるだろ?」
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