第95話 思いがけない危機
意外と静かな着地だった。
だが、降りてみると目の前にある王都は混乱している。
頭を抱える。そりゃ、そうだ。見たこともない巨大な物体が王都の前に着地したのだ。国民は混乱するだろう。
数十の騎馬兵がこちらに向かってくる。
両手を上げ、敵意がないことを示す。
そして、向こうにはっきり聞こえる様に話す。
「これは大学都市で開発した空飛ぶ馬車だ! あなた達に危害を加えるものでない! 僕は学長の使いとして来た! 国王陛下に謁見を賜りたい! 頼む! ことを一刻を争うのだ! 死の王のついての案件と言えば、あなた方も判るだろう!」
騎馬兵長らしき人物が前に進み出て訊ねてくる。
「あなたは何者か? ゴブリン族ではない。かと言ってコボルトでもない」
「僕はアダムの末裔だ」
後ろで聴いていた軍勢がどよめく。
アーサーは降りてきて僕に囁きかける。
「師匠、ここは僕らに任せて下さいませんか?」
「ああ、分かったよ」
「お初にお目にかかります。王国の方々。僕はアダムの末裔様の一番弟子でコボルト族のアーサーと申します。以後お見知りおきを」
「君は只者ではないな」
「武芸を嗜んでおりまして」
なるほど、抑止力として交渉している訳かな。
「僕ですらこの力なのですから判りますよね?」
いやいや! アーサー、それ誤解だって! 僕を過信するんじゃない! まるで僕が人外の力の持ち主みたいじゃないか! そんな力ないって!
助けを求めてウリエルに視線を送るのだが、近くの羊飼いの羊と戯れていた。
「わーい、フカフカだあー」
何て吞気な有様だ。しょうもない天使だ。
ホーリー・ヨセフよ、力をお貸し下さい。
僕は大工ではないが、ここは偉そうに見せなければいけない。
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