第76話 隠れ里に到着

 大きな崖が見えてきた。多分、この辺りに入り口があると思うのだけど。


「通行証を確認した」


 崖が鳴動した様に音を発する。


 なるほどねえ、崖そのものが番人な訳か。馬車が通れる位の道が出来た。


 そこを通って半刻経つと光が見えてきた。思ったより厳重な崖だ。


 さて、どういう街なのかな?


 小さな集落だった。ただ、村人達は活き活きとしている。どうやら治安も問題なさそうだ。素朴な村だなあ。


 でも、良い雰囲気だ。


「あれま、ルクス様が言ってた客人でねえの」


 話は通っているのか。凄いな、リリウムのお祖母さん。


「何にもないところですが、ようこそ。おや、まあルクス様のお孫さんでねえの。えらいめんこくなったなあ。しかもこんな立派な旦那さんを貰って」


 ご年配のコボルト族の女性はアーサーを見て感慨深げに言った。


 さすが恋愛の流行りの村だな、鋭い。


 リリウムが顔を林檎のように赤くしているとアーサーが一歩前へ出て挨拶した。


「お初にお目にかかります。リリウムの伴侶のアーサーと申します。そして、こちらがアダムの末裔様である師匠ファルマコ様です」


「ヘヘエー、失礼をばしました。アダムの末裔様。平に平にご容赦下さいませ」


「あ、いえ。そんな気を使わないで下さい。それよりウリエルさんの方が偉いのでは?」


「ウリエルはえらくないよー。ただ神様のしもべだよー」

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