第75話 某大御所先生に失礼と思いながらも

「君は強い。君の強さを頼ってこれからどんどん人が便りにしてくるだろう。君が世界を見捨てない限りはコボルト族の世界はもう少し続くかも知れない」


 なんてね。ちょっと格好付けてしまった。


 某大御所先生の代表作品の中枢の言葉を借りただけだ。


 それにしても某大御所先生に対する世の中の見る目は変わらないのだろうか。あれほど素晴らしい作品を世に出したのに。


 今日のセカイ系の基準となった作品なのになあ。まあ、確かに数百万部以上は売れているよ。


 でも、一億部位売れても良いと思うのは僕の個人的な感想なのかなあ。


「師匠、強さとは何ですか? 僕は時々師匠の方が強く見えますが」


「齢を取るとね、用心深くなるんだ。賢くなる訳じゃない。そこは経験則なんだ。ある程度相手のやり口も知っているし、それに対応する術も考えている。だから強く見える。ウリエルさんやグノーシス卿が良い例だね。常に先手を読む」


「はあ、では師匠やウリエル様はある程度未来を読んでから行動しているのですね」


「ウリエルさんやグノーシス卿はそうだろうけど、僕は違うね。行き当たりばったりだよ」


「はあ、師匠がどう生きてきたのか良く分かりませんね」


「神様の恵みさ。なぜか窮地に陥ると救いの手もある。まあ、世の中も捨てたものじゃないってことじゃないかな」


「神様は凄い方なのですね」


「そりゃ、もちろん。世界を創造した方だよ。何でも出来るのさ。尤も御心は読めないけどね」

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