第73話 アーサーは勘違いしている

 明くる日、眠たい眼を冷水でスッキリさせ、アーサーと一緒に馬を操る。荷台にはいつもの面子が揃っている。


「し、師匠」


「何だい?」


「し、師匠に頼みがあります」


「言ってごらん」


「実は僕、リリウムさんと……」


 後半が小さな声で全く聴こえない。するとアーサーは決意したのか真面目な表情で静かに強く語り出す。


「僕はリリウムさんと結婚しました。でも、二人だけの内密です。でも、仲間に隠しごとはしたくありません。隠れ里で挙式を挙げさせて欲しいのです。祭司の役を師匠にとりもって欲しいんです」


「うん、分かった」


「え、えらくアッサリしていますね? 驚かないのですか?」


「知らないのは当人達位なものだよ」


 昨日の内に巫女の側近の子達にも確認済みだ。


「そうでしたか」


 アーサーは若干表情が赤らんでいる。


「自信を持ちなさい。君は僕と違って優秀だ」


「いえいえ、それはあり得ません。師匠はアダムの末裔様なのですから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る