第68話 一体何があったんだろう……

「つくづくアダムの末裔には驚かされるわい。わしらゴブリンよりも文明が発達しておる。お主の時代はどれ位の技術があるんじゃ? 時計塔は造れるのか?」


「空を飛べる位の乗り物が開発されています」


「ほう、天空をか! そりゃ、凄い! どんな技術なんじゃ?」


「グノーシス、あまりファルマコをこまらせないで」


 ウリエルが口を挟む。


「ファルマコは学者じゃないの。信徒なの。そこまでもとめるのはひどいよー」


 まあ、確かに航空技術なんて僕知らないしね。鳥を模倣したんじゃないですか位しか答えられない。航空技術や流体力学は全くの素人だ。


「ふむ、それなら仕方あるまい。しかし、お主は変わらんな、ウリエル。あれだけのことをしておいてこの余裕。べリアスが知ったら失禁ものじゃな」


「もうしっているよー」


「なんとべリアスに知らせてしまったのか。あ奴も運が悪いのう。死の王対策に追われて賭博どころではないと言うに。いや、脅威が迫ったから心に余裕を持ちたいのじゃな。ウリエルを見た時のあ奴の反応はどうじゃった? ファルマコ殿」


「何ていうか非常に怖がっていましたね」


「じゃろうなあ。トラウマもんじゃしなあ。大陸全土が震えあがったものなあ」


 遠い眼をして語る賢老は一瞬にして年相応に見えた。思い出したせいで老けたのか?


「グノーシス」


 ウリエルが笑って釘を刺す。


「判っとる。みなまで言わん。アダムの末裔と言えど喋れぬ事柄じゃ。許してくれ」


「え、ええ、分かりました」


 一体、五百年前に何があったんだ。大陸全土って半端なことじゃないぞ。ガトリング砲の比じゃない気がしてきた。

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