第52話 賢者は常に先読みが巧い
店主は愛想良くウリエルに果物を差し出してきた。
「種は取ってあるからそのまま召し上がって下さいよ」
「ありがとー」
「ファルマコさんですか?」
店主がいきなり自分の名前を確認してくる。若干驚きながらも「ええ、そうですが」と返答する。
すると店主は小さな板を渡してきた。
「グノーシス様からです。研究室に入る際に使って下さいとのことです」
「は、はあ」
賢老だけあって人の行動を先読みするのも長けている様だ。つくづく食えない御仁かな。
後はソドムで稼いだ金の一部を使って蜂蜜とミルクを買い溜めしておく。
「ファルマコ、ぶたにく食べたいんじゃないの」
「太ってしまうよ。大人になると新陳代謝が減るんだ。そういうのはアーサーみたいな育ちざかりが食べるものなんだ」
まあ、確かに食べたい一品ではある。だが、ここにいる間はいつでも食えるから今すぐ食べなくても良い。
馬車に戻り、板を見つめる。割賦か?
「研究室ってどこ?」
「グノーシスの部屋だよー」
「へえ、気前が良い人だね」
「ファルマコはすぐに善意をしんじるくせがあるねー」
「何か裏でもあるのかい?」
「グノーシスはあたまいいからねー。何か考えてうごくの」
なるほど、何か目的があって僕らを招待する訳か。
アーサー達と合流をして大学に向かう。アーサーは袋いっぱいに豚串を入れて頬張っている。リリウム達はおそらくモンブランのケーキを食べている。
良いなあ。美味しそう。モンブランなんてもう何年食べてなかったかな? しかし、アーサーは本当に食べ盛りなんだなあ。ニコニコ笑って肉を味わっている。おそらく、大祭司の下ではあまり良いものを食べさせて貰えなかったのかも知れない。
まあ、全員鍛えているから問題ないか。
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