第44話 噂がここにも……

「本当に何も知らねえのな。死の王が現れたんだよ。我らの神にとって代わるつもりかねえ?」


「それ程まで強大無比な存在なのですか?」


 噂で聴いた位しか知らない。


「素性も判らねえ。ただ、判ることはとんでもない力を持っているってことだけだ」


 大丈夫かな、メランコリアさん。ソドムの未来に関心はあまりないがメランコリアさんがいれば話は別だ。


「どうしてそう判るのですか?」


「ソドムが軍を派遣したからだ。わずかに生き残った兵士の証言によると数百人近い兵士がなす術もなくやられていったらしい」


「それはそれは」


 この世界は恐らく人口も少ないのだろう。ソドムは大都会だろうが、小さな市位にしか感じられなかった。根本的に食料を開発する技術が欠けているのはありありと視えた。

 

 まあ、格差社会や奴隷制もあるから人口が中々増えないのもありそうだ。


 ゴブリンは性欲が強い、だが短命なのが玉に瑕だ。大祭司みたいな例外を除けば、大抵のゴブリンは短命なのだろう。医療にいたってもゴブリンよりコボルト族の方が長けていると視える。


 人類は第一次世界大戦時、アンモニアを大量に生産する技術を開発してしまったからなあ。お陰様で地球は六十億の人口分まで穀物生産は可能だ。今はもっと進歩しているかも知れない。遺伝子操作で更に穀物の量を増やせるからなあ。


 それに比べてこの辺りは土ばかりで草もあんまりないし。開墾しようとする者もいないんだなあ。 


 多分、学術都市はこういう種の危険性に対しても何らかの研究を行っているのだろう。共存を法律で制定しているからにはこの世界の問題を真摯に受け止めている可能性がある。


 ある意味、人類より高度な精神性を持った集団なのかも知れない。


「学術都市とは素晴らしい場所らしいですね」


「まあなあ、生活水準だけで言えば高いわな。飢えもない、奴隷制もない。議会制

民主主義を採用しているからな」


「と言うことはコボルトも政治に参加が?」


「いや、そこまでさすがに発達しちゃいねえよ。ただ、人権があるから生活は豊かだろうがな」


「歴史的にはどちらが古いのですか?」


「ソドムと言いてえところだが、真実は違う。神代からの平和主義者のゴブリン達が創設した組織が基になっているからな」


「神代の頃は違う神が崇められた様ですね」


「その記録はコボルトの城塞都市の巻物の中にしか残ってねえがな」


 なるほど、歴史を強引に修正しているのか。

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