第36話 何故か偉い人と勘違いされる
「何だかなあ……」
この幼女といると忙しないことばかり起きている。アーサーにもおいおいそのことを伝えなければならないのだけど。
「ありがとうございます。ウリエル様。天使様がお救いに来てくれるなんて夢みたいです」
泣いて感謝している彼を見て真実を言い出せない僕がいた。
「アーサーにたのみがあるの」
「何ですか? 何でもします」
青年は感極まっている。
「このせかいをたすけてほしいの」
「え? どういう意味ですか?」
「ここから先は僕が説明するよ、ウリエルさん」
アーサーに向き直り、真剣な話をする。
「もう知っていると思うけど、僕はアダムの末裔なんだ。これから話をするから聴いて欲しい」
「はい。アダムの末裔様」
「僕達の世界には士師という名称がある。それは人が堕落した時、神様が遣わす特別な人だ。君はこの世界の士師に当たるんだ」
「でも、僕はそんな世界を救う力なんてありません」
「大丈夫。歴代の士師達も似た様な人だよ。何ていうかな、神様の御心は読めなくてね。君が選ばれたのにも何か理由がある筈なんだけど、分からない。ただ、言えることは君には神様のご加護があるから戦いに勝利するには十分なんだ。僕の旅の目的は親友と呼べる兄弟を救うこと。君の使命は世界を救うこと。僕の親友はよく分からないけど厄介なことに巻き込まれていてね。何とかしたいんだ。その為に君に同伴して欲しいのさ。士師がいれば心強い限りな訳」
「はい、かしこまりました。アダムの末裔様の仰せのままに」
うーん、何か違うなあ。どうもこの子は僕を偉い人物か何かと思っていそうだ。その誤解を解かないといつかすれ違いが起きてしまう気がする。
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