第27話 ウリエルさん、世界の裏事情を語る
柔らかい葉で造った寝床で巫女達はすやすやと眠っていた。
「これで話が出来るね、ウリエルさん」
「うん、なにをききたいの?」
こちらも疲労困憊だが、目的を果たすまで倒れる訳にはいかない。
「解らないことだらけで訊きたいことすら判らないよ。でも、この世界の成り立ちから話してくれない?」
「さいしょのしゅぞくはドラグーン」
「え、竜騎兵?」
「そっちのドラグーンじゃないよう」
確かにそうだな。この世界に人類はいない。人の竜騎兵ではなく竜騎兵の様な人の亜種が存在したと考えた方が良さそうだ。
竜が人類以上の知性を持つ設定を題にした漫画を見たことがある。神代とやらもそんな時代だったのだろうか?
「そこからエルフやドワーフ、いろいろなしゅぞくがでてきたの」
「コボルトやゴブリンも?」
「あとの時代にでてきたよー。しんだいから五百年前のはんらんせんそうまではみ
んなあまりけんかしなかったのにね」
「反乱戦争?」
リリウムが言っていた世界の革新期みたいな説明の件だ。
「きょしょくのかみ」
「虚飾の神? それが一体何の関係が……」
「そうなのるゴブリンがあらわれて世界はおかしくなった」
声に真剣味が含まれていてウリエルを笑うことが出来なかった。それ程の出来事だったのだ。
僕はたった今まで誤解していた。
農業技術の革新があったこと。五百年前まではゴブリンの方が少数派だったが農業革命を経て人口を増大させ、更に甲冑の革新と資本家のゴブリンの誕生、奴隷制の発達、それらによってゴブリン族は繁栄し、コボルト族と立場が逆転してしまったこと
それらが音を立てて崩れるかの様な勢いで書き換えられた。
ゴブリン族は歴史上発達しただけではない。その土台を根本的に創り上げられた一人のゴブリンが存在したのだ。
「それは……」
「うん?」
「いや、何でもないよ」
甚だ失礼極まりない話であるがイエス・キリストを連想させる話だ。やっていることは真逆だが。
まるでデミウルゴスかベリアルがこの世界に降誕して肉を纏ったかと連想させる様な。
在り得ない話だ。頭の中でこの邪悪な思考を中断しようとする。
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