第26話 ウリエルさん、盗撮は犯罪ですよ

 都市の中心に近づいたのか、地面は石畳となった。側近の従者たちが一軒一軒を確認していた。一人の従者が声を張って知らせた。燃料の残っている家を見つけたようだ。


 せっせと従者たちは、火をおこし、葉を集めている。


 ウリエルの部屋から作られたようで、僕たちはその部屋に通された。バフっとウリエルが葉の上に飛び込んだ。


 ひらりと揺れたスカートに視線がいってしまう。何故、この子はインナーウエアを身につけないのだろう。スパッツやタイツなどを身には付けないのだろうか。

 

 ウリエルはふんふんと鼻歌を歌いながら、人差し指を振り始めた。隣が巫女達の部屋になるようだ。写真でも取ろうとするかのように、四角形を作ると、パシャリと音を立てて壁がぬけた。


 正確には、壁が完璧に透けているようである。こちらに全く気がつかない彼女たちは、タライのようなものを持ち込み、布を濡らし、絞っている。

 

 巫女が、服に手をかけ始めると、僕はそれが体を拭くためだったと思った。鼓動が高鳴る。正直、期待している。そんな時、「ファルマコには、すぎたるものかなぁ」と呟くウリエル。

 

 そう言うと、もう一度、パシャリと音が鳴る。壁が元の役割を果たし始めた。


「ざんねんだねー」


「ウリエルさんは人をからかうのが本当にお上手で」


 ふざけんなよ、このロリータ。ただでさえ悶々としている状況下でこんなことするとはどういう了見だ。かと言ってこのロリータそのものに手を出すと地獄行きは確実だしな。


 正しく生殺し状態。本当に御使いとは読めない存在だとつくづく思う。気儘な存在だな。

 

 僕はそっぽを向いて物思いにふけった。挑発とも言えるが、その後もウリエルはパシャっと音を鳴らしながら壁を消したり、戻したりしていた。


「ウリエルさんは僕を地獄に突き落としたいの?」


「んーん、てんしはきまぐれなのー。まえにもいったけどかぜだからねー」


 全く。まあ、良い。これからする話を前にウリエルなりに気を遣ったと考えれば良い。

 

「みんな、ねむったねー」


「そうだね」


  幼女の姿の御使いは、今日は語り足りない様子だった。

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