第23話 リリウムさんから訊いた世界の仕組み
「ふむふむ」
リリウムさんの説明を受けて妙に納得したところと新しい疑問が湧いた。
この世界の端は海と呼ばれる世界であり、その先は未知の領域だと言うこと。つまり、航海技術が全く発達していない。この大陸内で皆生活を営んでいる。
コボルト族は天然の山脈を背後にした城塞都市に籠って生活していること。城塞都市の幾らか離れた所にコボルト族とゴブリン族の共存都市国家あり、その交流によって経済を保っている。
他方、ゴブリン族はソドムを中心とした宗教国家、魔法を使うことを研究しているシャーマンを中心にした大学都市、鋳造と鍛冶で栄える王政国家に三分立している。
この三国家に共通するのは農業技術の革新があったことである。五百年前まではゴブリンの方が少数派だったが農業革命を経て人口を増大させ、更に甲冑の革新と資本家のゴブリンの誕生、奴隷制の発達、それらによってゴブリン族は繁栄し、コボルト族と立場が逆転してしまったらしい。
らしいと言うのは、それは巫女が伝承の中で聞いてきた歴史であるからだ。しかも未だこの世界には秘密があるらしいのだが、彼女の口からそれらは出て来なかった。
「ふむ、奴隷制ね」
つまり、宗教国家にもコボルトの奴隷がいるという訳だ。しかも処女は高値に取引されるらしい。嫌なアイデアではあるが、これしかない。
「リリウムさん、奴隷の振りしてくれませんか?」
要するに自分は行商人の振りをする。奴隷の所有者としてソドムに潜入するのだ。アダムの末裔として見られない様にウリエルの力を借りる。
決めたら行動は急げだ。考えることの多い僕だが、この世界では行動しないのは即死に繋がる恐れがある。向き不向きはあまり気にしていられない。
幸いにもこちらにはウリエルがいる。一騎当千以上の戦力なのは間違いない。
と言っても今日は遅くなる時間か。
「この辺りは見渡しも良いし、野営をとりますか」
「いえ、少しお待ちを」
リリウムが神妙な面持ちで思索に耽って進言してくる。
「ここから先、そう遠くない場所に古代都市の廃墟があります。そこで野営をとるのが宜しいかと」
「それは何故?」
「その古代都市はゴブリン達が怖がって近づかないのです。一番、安全な場所かと」
成程、確かにここら辺ではゴブリンの襲撃がない。古代都市が近いから忌避しているのか。
「判ったよ。そこまで行こう」
そう言って軽トラを再び走らせる。
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