第20話 軽トラ
「ガス補給出来ないの?」
「ウリエルがだしちゃうとここらへんがぜんぶギャスだらけになっちゃうよ」
それは又クレイジーな出し方だな。極端過ぎる。仕方ない。
「じゃあ、別の装甲車を出してよ」
「奇跡はつかいすぎるとよくないよう。ファルマコいっていたよね?」
良く見るとウリエルの表情が芳しくない。
もしかして頼りすぎたか。ちょっと無理している感じがあるな。
「判った。ウリエルさん。何なら出せる?」
「けいとら」
「じゃあ、それで。その前にリリウムさん、とても女性に質問する内容ではないのだけど、聞いてくれますか?」
「何でしょうか?」
ずっと気になっていた。彼女が持っていた矢筒と弓を。
「その矢は使えますか?」
思ったよりことはすんなり済むものだ。ウリエルの表情を見た時は一抹の不安が過ぎったが、良く考えれば未だ手はあった。あったと言うのは精確ではないかも知れない。ウリエルは予め策を用意していた節がある。
ウリエルが指を鳴らした後、軽トラの荷台には女の子達が乗っていた。慎重に運転しなければ。
その思いも杞憂だった。リリウムを側近の女の子達が支え、射手を務める者がいれば十分だった。
隣でウリエルが寝ているのを見てからバックミラーに目をやるとそれは大した光景だった。追っ手が来ない。と言うことは射手が全て仕留めているのだ。
実際大した戦闘技能だと感じる。コボルト族は非力な様子だが、巫女となると別格だった。
「もう大丈夫です!」
溌剌とした声で安全を伝える声。殺しが怖くないのか? 常時、戦争状態にある世界と平和ボケした僕とでは感覚が少し違うのかも知れない。負ければ、待っているのは凄惨な地獄だけだからか?
ゴブリン族は他種族の女性を繁殖の手段に使っているのは最初の会話で明らかだった。この世界でコボルト族はそういう意味で希少種として扱われているのだろう。とても許しがたい行為だが、生憎僕にそれを非難する権利はない。
元いた世界の異常に目を瞑ってきた僕が異世界で異常を非難するのはお門違いだ。
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