第18話 ウリエルさん、この世界をちょっと語る

「このせかいはね、しけんのひとつのせかいなの。神様のうつしみであるひとがいないせかい。そのせかいがどうしんぽしていくか。ひとがいないほうがはんえーするのかとか、ひとがいないとだめなところがあるとか」


 ふーん、要するにあれか。ナルニア国物語みたいなものか。神が造った世界ではあるが、人間がいない。女の子達の様子から察するに人間は神の子供みたいなものでこの世界を支配する権利があるみたいな感じか。だからアダムの末裔なんて大層なことを言うのか。


「でも、それがメランコリアさんに何の関係が」


「コボルトたちはこのせかいのクリスチャンなの。それがいまゴブリンたちにおびやかされているの。だからたすけてがひつよーだったの」


「神様が造った世界なのに?」


「そーてーがいだったの」


「むう」


 付き合いが短いがウリエルのことはある程度解る。嘘は言っていない。嘘は言っていないけど、明らかに何か隠している。そういえば、さっき配分率がどうのこうのと言っていた。ウリエルは僕のところに来た時、「神様の考えたことだから」と言った。適当に流していたが、よく考えると予め筋道が立てられていたんじゃないか? そして、ウリエルはその目的を知っている節がある。


 神と言う存在はよく解らないことをする。よく解らないことをするが必ず意味はあるのだ。


 本当にこの世界を助ける為にウリエルが遣わされた? だったらベリアルはどうなる? 彼女にはこの世界を救う目的がない。


 何かもやもやする。表向きは世界を救うみたいなライトノベルの王道みたいな展開なのに。見えないものがある。ただ、それが何なのかが判らない。


 まあ、だけど、それを喋らないと言うことは時期尚早と判断されているかも知れない。


「それよりだ。あんな凶暴な種族がいると怖くて夜も眠れないね」


「ええ、正しくその通りです。私達も自衛の為に鍛えているのですが、幾分華奢なものであの程度のものを割る位が精一杯でして」


 彼女は向こうの拳大の石を指して正拳突きをする。すると衝撃波で砕け散って幾つかの小石になった。


 うん、これはどういう世界なのかな? 皆こういう力持ってんの? どんだけチートな世界観なんだよ。


「ねえ、ウリエルさん、この世界の人達ってこんな強いの? 多分、僕居ても何の役にも立たないよ」


「それはリリウムがみこだからだよー」


「巫女? 独り子の御子じゃなくて?」


「うん、みこだよ」


「巫女? 何で」


「さいしみたいなものなの」


 成程、司祭みたいものか。人々と神の間をとりもつ者。一種の信仰対象である為に聖別されて強い力を持っているのだろう。


「私達の隠れ家まで案内して頂いて宜しいでしょうか」


「良いよ」


「では道案内させて頂きます」


 その時、甲高い角笛が聞こえてきた。未だ遠方だが、人影が見える。


「まずいわ! 敵の増援よ!」


「助けて、ウリえ、いや、ウリエルさん」


「しかたないなあ。そーこーしゃー」


 ピカーッッほわわわぁん、タッタラタッタッターターターン。


 凄いな。装甲車が現れた。


「運転、誰やるの」


 皆の視線が僕に集まる。


 嫌な予感が僕の脳裏をよぎった。

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