第17話 旅へ出る
地面が抉れ、向こうにある巨大な岩がボロボロに崩れている様子を見てウリエルに不気味さを感じた。
これが御使いの力か。
並大抵の力ではない。歩兵分隊すら数秒で蹴散らしてしまう。今蹴散らしたのは二つ分の分隊位だろうか。そんな圧倒的な破壊が目の前に広がっていた。
本当に良かったな。痴女モードに乗せられて迂闊に手を出していたら肉片すら残らないんだな。この幼女は強すぎるわ。
「あのー、ウリエルさん? そろそろご説明頂けませんか?」
「ごめんねえ、この人はファルマコ、ウリエルの大切な人なの」
「あー、ウリエルちゃん、いけないんだ。神様と言う夫がありながら浮気してるー」
女の子達のからかいにウリエルも笑って返している。
「もー、だいじょうぶだよう。神様はこころがひろいおかたなのです」
「ほんとにー?」
ああ、ついていけない。このトークに混じれとか無理だよ。
と言うより意外な新鮮味を感じる。僕と話している時以外のウリエルを知らないから新鮮味を感じるのか。
「ええと、コボルトさん? それともリリウムさんとお呼びすれば良いでしょうか?」
「失礼致しました、アダムの末裔様。コボルトとはこの世界に棲む種族の名前です。緑色の男共はゴブリンと言う野蛮な種族です。私個人の名はリリウムと申します。以後お見知りおきを」
女の子は平伏して丁寧に答える。
「アダムの末裔様?」何故、女の子が僕のことをそう呼ぶのか今一理解出来なかった。
「ご無礼があったのでしたら私共を処して頂いて構いません」
「いやいや、普通にファルマコって呼んでくれませんか?」
「では、ファルマコ猊下」
「いえ、猊下も要りません。普通にさん付けでお願いします」
そもそも猊下と言う呼び名はキリスト教上の最高位かそれに近い人に使う敬称だ。
「ファ、ファルマコさん」
何故女の子がもじもじするのかさっぱり解らない。
「ウリエルさん、本当にそろそろ説明を」
「そーだね。ここはメランコリアさんが本来来る筈の異世界」
「来る筈?」奇妙な言い方が引っかかった。
「じかんそこーだよう」
ああ、つまり、あれか。時間遡行を使ってメランコリアさんが来る前の異世界に来てしまったと言う訳か。
「しかし、何でそんなに回りくどい方法を採るのかな? ウリエルさんならもっと簡単に問題を解決出来そうなものなのに」
「しめーがあるからね」
「使命?」
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