第15話 異世界へ着く
「あれ?」
気が付いたら草原にいた。ウリエルは横ですやすやと眠っている。
ここは何処だ?
何やら薄い膜に覆われている様だ。膜の中だけ暖かい空間に包まれている様子で、草原自体は寒そうな風が吹きすさんでいた。
草原に人がいる。
目が悪いので凝らして見る。
ぎょっと驚いた。
緑色の肌をした人間、しかも男達が獣耳をしている可愛い女の子達に絡んでいるのだ。
何だ、あれは?
しかもこちらには気付いていない。
彼らの会話が聞こえてくる。
「オラッ! とっとと脱げよ、コボルト風情が調子こいてんじゃねえ!」
しかし、獣耳の華奢な女の子達も中々屈強な心の持ち主の様子で言葉を用いて手強く否定していた。
「私達はものではありません。ゴブリン達よ、神がお造りになられたこの身体をあなた達の欲の為に使うのでしたら神は悪を憎み、いつの日か終わりの日に神ご自身が裁きを下すでしょう」
「ケッ、滅びかけのクリストティヌス共が吠えやがる。てめーらは黙って俺らのガキを産めば良いんだよ!」
男の乱暴な口調にちょっと不快感を感じながらも、逆に女の子達に対して呼んだ言葉が引っかかる。
クリストティヌス。それは初代教会達のクリスチャンの呼ばれ方に近かった。
「ちょっと待ってくれ」
言葉をかけると男女共に急に僕に気づいた様子で驚いた様子で見ていた。
「ヒュ、ヒューマン? 馬鹿な、在りえねえ!」
ゴブリンと呼ばれた男達が一様に驚いている。対照的だったのはコボルトと呼ばれる女の子達で僕を見て驚きながらも恭しく跪いている。
えーっと、どういうことだ? これ?
「ヒューマンっても恐れることなんざねえ! やっちまえ!」
ゴブリンの一人が弓矢を構えて解き放った。
風切り音と共に頬を掠めるものがあった。
ほんの一瞬。事態が理解出来なかった。
射られたの、僕?
ゴブリンは震えながらも次の攻撃を繰り出そうとしている。震えているから先程の攻撃は命中しなかったんだな。
冷静に考える場合じゃないだろ!
本気で殺しにかかってきているぞ!
「助けてよ、ウリエルさん!」
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