第11話 奇跡も考えものだ……


 ウリエルは答えをあっけなく語る。


「ウリエルはファルマコが天国に積んである冨によって奇跡をおこなうの。でもねー、ほとんど積まれてないの」


「本気ですか? 正気ですか? それとも真実ですか?」


「ざんねんだけど、しんじつなのー」


 内心、落胆した。神の為に働いたことがない人生だからな。とは言っても天国に冨が積まれていないと聞かされると落ち込む。


「でもねー、かるい奇跡くらいはおこせるのー。そこはむしょーの愛なの」


 ほうほう、無料で行ってくれる奇跡もあるんだ。


「例えば、どんなことが出来るの?」


「せかいのたいこくのぐんたいがそうこうげきしても、ウリエルの家族がきてくれてたおしてくれるの」


「………………」


 うん、これは本気で危ない御使いだわ。ウリエル自身がなよなよしていても家族がそうとも限らない。寧ろ、こちらの期待を嫌な意味で裏切って、とんでもない戦士が群れをなしてやってきそうだ。


 そう言えば、旧約聖書でも御使いが人間の軍隊と戦って圧勝していた場面が何処かにあった様な気がする。


 そう考えるとアメリカ合衆国の大西洋艦隊やインド太平洋艦隊、中華人民共和国の陸軍、ロシア連邦共和国の精鋭軍とか蹴散らす様に倒してしまうんだろうな。


 奇跡も考えものだ。


「ウリエルさん、奇跡の使い方はもう少し考えた方が良いよ?」


「こーかいをわったりするのもだめなの?」


「うん。海を真っ二つに割ったりするのも時と場合によるよ。出エジプトの時は仕方がないとしても」


 奇跡には色々なものがある。聖書には天体の動きを止めたりした記述があったりする。


 でも、そんな奇跡が溢れたら世界中が大混乱だ。そんな世界を見たら人はどんな反応をするのだろう? 多分、畏れ多くて神様に平伏すしかない。そして、人類は神様に頼りきりになり、進歩を已めてしまうだろう。


「ウリエルさん、みだりに奇跡を使うのは止めよう。奇跡って神様の業じゃん。それを僕達被造物の手でどうこうしようなんておこがましいのかも知れないよ?」


「んー、たしかに」


 

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