灰色の殺し屋

一瞬戸惑ったあと、パーティーの受付は俺の名を訊ねた。

「――山田」通り名ならば、灰色の殺し屋。

名簿に俺の名前を見つけたらしく、受付は微笑んだ。俺のような者は少ないが、怪しまれるほどでもない。

「はじめまして、山田といいます」

俺は目当ての男を見つけ、笑顔で話しかけた。相手の身元や好みを下調べしておいたので、順調に打ち解ける。パーティーの終盤、二人で飲みなおそうじゃないかと誘うと、簡単についてきた。

ほろ酔い加減の奴さんを、俺は車に案内し、カギをかけた。油断しきっている奴に突然覆いかぶさり、猿轡をかませる。悲鳴を上げさせる暇もなく、俺は奴を刺した。何が起こったかわからないといった風情の大きな目が、だんだん灰色に濁っていく。

グレイというのは、本当によくできた名前らしい。ご存じの通り、体表も灰色。さっき濁った瞳も灰色。そして、俺と奴の服を盛大に染めた血も、灰色。

灰色の返り血を浴びて10年。「灰色の殺し屋」と呼ばれるのは、そのせいだ。


(お題:灰色の殺し 必須要素:山田)

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