生まれたのはロボット

「20年前、お前が生まれたとき、私は盛大に祝福したんだぞ。人間がみんなする誕生日会みたいなものを開いて」

「データにありません」

「うーん、さすがに20年も前のことは覚えてないか」

「20年前から15年前にかけて、データの損傷が激しいです」

「15年前のことは覚えているか? 他のロボットたちとパーティーをやったんだが」

「わずかに記録が残っています。クラッカーというものを初めて目にしました」

「そうか、そうか。大きな音を怖がるといけないと思って、今まで使わなかったんだな」

「しかし、1年前の記憶はしっかりと残っています。あなたは私に新しいタブレット端末をくれました。ゲームアプリばかり使っていて、あなたに削除されたことを覚えています」

「よく覚えていたね。嬉しいよ」

「そこまでだ、マッドサイエンティストめ!」

「誰だ!」

「誰ですか」

「私は科学倫理委員会のエージェントだ。お前を逮捕する。人間の子供をロボットに育てさせる実験をした罪でな」

「……」

「博士、どうしたのですか。博士!」

「君か、ロボットに育てられた子供というのは」

「ワタシが、人間?」

「タブレットのゲームを削除した理由、教えてあげようか」

「え……博士?」

「ゲームを楽しむのはロボットにふさわしくないと思ったからだよ。どれだけロボットらしい子供ができるか、私は楽しみだったのさ」


(お題:記録にない祝福)

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