第2話 牢獄

約半年間に渡る旧サラージア王国軍と革命軍の内戦は、革命軍の完勝で終結した。

国の西端を拠点とした革命軍は、国の東端にある王都を目指して進軍した。そもそも、今回の革命の発端となった戦争で戦力の大半を失っていた王国軍になすすべは無かった。


ハーンブルク軍の支援を受けた革命軍は、あらゆる面で王国軍を圧倒、ジオルターンを占領したハーンブルク軍との挟み撃ちによって王都は陥落した。そして、サラージア王国は事実上、滅亡した。


王都は陥落したが、戦争はまだ終わっていない。勝った側の革命軍は、当然ながら戦後処理を行わなければならないのだ。

誰がどのように責任をとり、今後どのような国を作って行くか、それを話し合わなければならない。

もちろん、そう簡単な話では無い。

一歩間違えれば、以前よりも酷い独裁政権が誕生する。最悪の場合、権力争いを理由に再び内戦に突入する。


そして、革命を成功した場合の戦後処理を行った事がある革命軍の貴族や軍人などいるはずがなく、感情論で国をめちゃめちゃにしないためにも、ハーンブルク家ー正確には兄さんが仲裁役をかって出たのだ。


そして、僕がハーンブルク家代表として派遣された。



「最初の政務は、拘束した旧王族の処分ですか・・・・・・」


僕の手が止まった事を不思議に思ったカルイさんが、手元の資料を覗き込みながら呟いた。

王家の処分、手元の資料によるとかなり揉めているらしい。長い歴史を持つ王家を途絶えさせるのはどうなんだという擁護派と、革命の印として王家を全員処刑すべきだという強行派、他にも色々な派閥が存在しているが、大きく分けるとその二つだ。

どちらも一理ある、そしてその決定権はハーンブルク家の代表である僕の元へと移されたというわけだ。


「これはまた、レオルド様はとても重い問題の解決をユリウス様に任せましたね。」


「え?兄さんが?」


「あれ、知りませんでしたか?こちらの仕事は全て、レオルド様が審査された上でユリウス様に回されております。半年ほどは、サポートとしてレオルド様が政務を手伝ってくれるそうです。その後は、どうしてもという話がなければレオルド様は助けないそうです。」


「そうなんだ・・・・・・という事は、もしかして、この政務を最初に行うように選んだのは・・・・・・」


「はい、レオルド様です。そして、ユリウス様ならばこの問題を解決できると考えたのでしょう。それともう一つ・・・・・・」


この初仕事が、同時に、兄さんから出された課題である事がわかる。

そして、兄さんがどういう人なのかよく知っている僕は、ある推測が頭に浮かんだ。

それは・・・・・・


「兄さんが、何も考えずにこの課題を僕に出すはずがない。」


「はい、おそらくですが、この課題には意味があるのでしょう。何なのかはわかりませんが・・・・・・」


「なるほど・・・・・・」


どんな意味なのかは分からない、だがこの課題には意味があり、きっと何処かにヒントがあるはずだ。というわけでとりあえず、情報収取から始める事にした。

渡された紙束をめくって、現状を確認する。お母様や兄さんから教わった事を思い出しながら、最善の選択を探す。

決めなければならないのは、国王とその家族、およそ15名の処遇。孫などはいないが、一夫多妻制なので子供は多い。

誰を生かして、誰を罰するか、その判断は僕の手に委ねられている。


どうすればいいか、どのような判断が適切か、今の自分に何ができるか、一通り見て、頭に叩き込んだ事を頭の中で整理する。

駄目だ、何か足りない気がする。

あと一つ、何かが・・・・・・

あれ、そういえば・・・・・・


「そう言えば、どうしてもこの任務が最初なんだろう。」


「確かに、普通ならばもう少し容易な課題から始めるべきですよね。」


そう、そうなのだ。まずは簡単な問題から初めて、段々と仕事に慣れるべきなのに、この難題が最初と言う事には、意味があるはずだ。


そうか、僕に足りないモノ、それは・・・・・・


「カルイさん、王家の人達が捕らえられているという牢獄はどこにありますか?」


「極秘事項ですが、ちょうどここ、ジア連邦共和国行政府の地下牢に収監されていると聞いております。お会いになりたですか?」


「ぜひとも頼むよ。」


「承知いたしました。」


僕は、早速牢獄へ向かう事にした。


きっと、ここに答えがあるはずだ。



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どうでもいい話


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