第34話 パーティーの終幕
国王の宣言によってようやく目に見える形でシモンとマリアンの処遇が決まり、パーティーの参加者達も安堵する。
エレオノーラを陥れておきながら、王太子夫妻として晴れやかに結ばれた二人に罰が下る。
これでやっと真の悪は処罰されるのだ。
そして、二人に陥れられても這い上がり、客観的な証拠を以て二人に復讐したエレオノーラは流石だと評判がうなぎ上りである。
サンブルヌ学園で成績優秀で才女として名高かったエレオノーラはやはり自らの手で状況を打開していたと人々に印象付いた。
いつの世も勧善懲悪は人々の心を掴むのだ。
エレオノーラもこの歓迎パーティーでの目的を果たし、ほっとひと息吐く。
マリアンの毒殺未遂事件の真相を皆に暴露し、シモンとマリアンに罰を与えること。
国王とシモンの所業を引き合いに出して、王族への求心力を失わせること。
この目的が果たせたことがパーティーでの何よりの収穫だった。
この二つの目的を一度に果たすには歓迎パーティーというこの場はこの上なく都合が良かった。
参加者として多数の貴族がこの場におり、自分達の指示により、王家も全員この場に出席させることが出来たからだ。
エレオノーラによる事件の真相やマリアンの本性の暴露は人数が多ければ多い程効果的である。
あんな映像が出回ったら、たとえマリアンは国王の判断で平民落ちにならなかったとしても、貴族社会で彼女の居場所はないだろう。
シモンにおいても同様だ。
シモンは映像ではなく、口頭で彼がやったことを伝えられたが、これだけの大人数がいる中で彼がしたことを言われると、廃嫡されなかったとしても信用は地に落ち、誰も彼の言うことには耳を貸さないだろう。
国王の判断で平民落ちしたことは、貴族社会でネチネチ、チクチクと針の#筵__むしろ__#になって肩身の狭い思いをするよりもある意味二人にとっては良かったのかもしれない。
貴族社会は一度大きな失敗をすると、その後もずっとそのことを突かれる。
二人は平民になったとは言え、平民として平穏に暮らすことよりもまず厳しい刑罰の方が先に来るので、そのことに気が付くのはずっと後になってからだろう。
その上厳しい刑罰によって死亡する可能性は除外している。
「皆様、私達夫婦の歓迎パーティーの場をお借りして、王家との個人的な問題についてお時間を頂いて申し訳ございません。もうこれ以上、私からお話することもございませんので、これより本来予定されていたパーティーに戻りましょう」
エレオノーラは参加者に向けて一度カーテシーをする。
エレオノーラの言葉でパーティーは通常のパーティーの様相に戻る。
ずらりと並べられた料理のテーブルの方に行って料理を楽しむ者もいれば、中央の大きく空いたスペースで宮廷音楽家達による演奏に合わせダンスを楽しむ者、はたまた先程エレオノーラ主導で起きた出来事について友人同士で集まって話す者など三者三様である。
エレオノーラとジョシアも主に彼女が親しくしていた者を中心に挨拶回りをしていた。
ジョシアはオルレーヌ王国にいた頃、エレオノーラにくっついて社交の場に行ったこともなく、ずっとブロワ公爵邸にいた為、エレオノーラの友人には会ったことがなかった。
その頃はエレオノーラの表向きの婚約者はシモンだった為、別の男性と一緒に社交の場に行くことは誉められたことではないのだ。
エレオノーラは嫁ぎ先がルズベリー帝国である為、オルレーヌ王国に行く機会はそうそうないことだとわかっており、こんな機会でもなければ友人をジョシアに紹介する機会がないと思い、自慢の友人を紹介した。
「ジョシア。こちらはヴィクトワール・グラール侯爵令嬢。私の友人ですわ」
ジョシアは真っすぐなプラチナブロンドに碧眼の人形のような令嬢を紹介される。
「初めまして、ジョシア殿下。私はヴィクトワール・グラールと申しますわ。エレオノーラ様とは幼少の頃からの長い付き合いになります。よろしくお願いします」
幼少期にどこかの貴族のパーティーに参加した時、二人は知り合いになった。
お互いに家格も近い為、すぐ仲良くなったのだ。
「こちらこそ初めまして。ヴィクトワール嬢。エレオノーラからあなたの話は聞いています。これからも引き続きエレオノーラ共々よろしくお願いします」
「オルレーヌ王国語がお上手なんですね」
「ヴィクトワール様。実はジョシアは彼が10歳の頃からつい最近までブロワ公爵邸に滞在していましたの。だから公爵邸で日常的にオルレーヌ王国語でやり取りしていたのです」
「そうなのですわね。あまりにも発音が綺麗だからつい驚いてしまいましたわ」
パーティーは先程までのエレオノーラがシモンとマリアンを追い詰めたりする時の緊迫した雰囲気から和やかな雰囲気になっていた。
こうして波乱の帝国夫妻の歓迎パーティーは幕を閉じた。
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