第3話 それは寝かしつけには不向きなはなし

 昨夜、わたしも珍しく子どもらと同じ時間に寝室に行って、自分の布団のなかでやつらが眠りにつくのを黙って待っていました。

 いつもはひとり時間惜しさに最後まで1階にいて粘るんですけど、どうにも調子が悪くて横になりたかったので一緒に2階に上がったんですね。

 やつらはいつも寝る前に騒いでるとわたしに怒られるので、そこは心得たものでして、ふたりで向こうの布団でくすくすいちゃいちゃしていたんですよ。その様はまさにラブラブカップル。

 そしたらそのうちに、向こう側の布団のなかで下の子くんが、上の子くんに寝かしつけの創作ストーリーを披露し始めたのです。

 小学校低学年の舌っ足らずな可愛い高音ボイスの話し方を想像しながらどうぞ。


「むかしむかし、あるところに、上の子くんと、下の子くんが、いました。

 おうちであしょんでいると、しぇんしょう(戦争)がおきて、たからものが、こわされました。

 たからものは、ゲームと、あいぱっどでしゅ。

 ふたりで、なおしました。

 そしたら、いんせき(隕石)が、おちてきて、またゲームと、あいぱっどが、こわれまちた。

 かなちかったです。

 おちまいっ!」


 って言ってたんですよ。

 なんやその物騒なはなしは。笑

 ゲームとアイパッド直せるんかい。そんな物騒なはなしで寝られるかいな。そして最後の感想文的なシメ。うーん……。

 とあまりに残念なストーリーにツッコミ満載なことを思いながらわたしは黙って聞いていたわけです。

 流石に上の子くんも「なんっじゃそりゃ」と思ったらしく、

「下の子くん下の子くん、それ学校で戦争のはなしかなんか習ったの? 」

と質問したんですよ。

 おお、流石は中学年。まともなこと喋る。そしたら下の子くんが答えるじゃないですか。

「ううん、ぼくがじぇんぶかんがえた!」

 まじか。

 物騒なこと考えてんな。

 戦争だの隕石だの、彼に一体なにが起きているんでしょうね。取り敢えずそんな物騒なはなしでは寝られまいと思ってたら、21時50分に突然ふたり揃って電池切れみたいにパタッと眠りに落ちました。

 え、なにこれすご……。

 いつもこんな感じなのかしら。とか思い、わたしも調子悪いから寝たかったけどどうにも寝つけず、結局遅い時間に眠りについたわけなんですけれども、なんとも日頃見ない就寝前の様子が見れて面白かったです。


 そんな下の子くんは今朝ほんのちょーっと鳴り響いたカミナリ様にビビりまくって、学校行く用意をしていた上の子くんに抱きついて着替えを妨害。自分がまだパジャマだったことでわたしに怒られ、カミナリ怖いわ母ちゃん怖いわで涙目になって登校していきました。

 でもわたしは知っているのです。あの涙が、わたしの視界から外れた途端にケロッと引っ込むことを。


 最近ふたりは学校から帰ると、わたしに児童向け小説のシャーロック・ホームズを音読させて楽しんでいます。喉が疲れるので自分たちで読んでほしいんですけど、まあ興味をもってくれるならと思ってがんばって音読をしています、わたしが。

 さーて今日は宿題に何時間かかるんでしょうか。

 やつらが帰ってくるのは憂鬱です。ではでは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る