3
〜放課後〜
「ちかじゃーねー」
「はいはい。またね」
HRが終わると私は親友に挨拶をして颯爽と教室を後にした。
HR中に思いついたメロディを口ずさみながらルンルンで階段を降りていた。
しかしそれが良くなかった。
気づいた時には視線が斜め上を向いていた。
あっこれはやばい。階段を踏み外したことを察し、目を思いっきり瞑り衝撃に備えた。
しかし誰かに身体を支えられた感覚があり視線も正面に向き直っていた。
「気をつけろよ」
そう言うとその人は支えていた身体から手を退けた。
「すいません……ありがとうございます……」
後ろに振り返り直接顔を見てお礼を言おうと思ったものの、すでに人はおらず微かに石鹸の香りがするだけだった。
誰だったんだろうと思い階段廊下を見渡してみたが、いろんな人が行き交っており全くわからなかった。
まぁいいかと思って再び階段を降りる。
さっきまで口ずさんでいたメロディを忘れたと言うことに。
あぁせっかく名曲が生まれる予感だったのに。
ふぅとため息をつくと気持ちを切り替えた。
家に着くと私はいつもとは違い、ちかにもらったスケジュールを壁に貼り、テスト勉強から始めることにした。
もちろん定期試験の順位を落とさない為だ。
動画配信サイトで適当に作業用のBGMを流し、タイマーをセットして机に向かう。
よしっ!今日の分完了っと。
予定されていた分の範囲の勉強を終え、ちかに完了の連絡をする。
私はピアノに向かうと指を動かすための基礎練をこなしてから、ノートにメモしていたメロディを弾いてみることにした。
うんやっぱり良い感じ。
でもこれは今作ってる恋愛曲とはちょっと違う感じなんだよね……。
恋愛の曲を作り始めてから早くも3週間経っている。
しかし、方向性も定まらず、失恋なのか初恋なのか……それすらブレてきた。
やっぱり恋愛曲って難しいなぁ……。
恋愛に関する曲は人気になることが多い。それは歌詞に共感する人が多いからだろう。
しかし私は初恋すらまだ経験したことがない。
どんな感じなんだろう。
親友であるちかは出会った頃は化粧もしないし、髪はポニーテール、制服は着崩すことなくきっちり着ていた。
恋なんて勉強の邪魔よなんて言っていたのに、予備校で他校生に一目惚れしたらしくすっごくわかりやすく女子になっていった。
雑誌を買ったり、動画で化粧の方法を勉強したり、苦戦しながらもいろんなヘアアレンジを練習して本当にすごいなと思う。
私も恋をしたらそこまで変わるんだろうか……。想像がつかない。
うーんやめやめ考えてもわからない。
一旦恋愛について考えるのをやめることにした。
気持ちを切り替えるために、いったん外の空気を吸おう。
椅子から立ち上がり窓際に近づく。カーテンを開け窓を開け放つ。
新鮮な空気を吸い込みリフレッシュしていると、ふと向かい側にあるコウくんの部屋が目に入った。
そう言えばコウくんの恋人の話も聞いたことないな?
私が幼稚園の頃に隣にコウくんが引っ越してきてから、学年は1つ違うもののずっと一緒の学校に通っているが、恋人がいると言う話は一向に聞かない。
コウくんとそう言う話したことないけど、どうなんだろうなぁ。
男性の恋愛観もちょっと気になるし、明日にでも聞いてみようかなぁ。
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