2
〜昼〜
「それで、かな進捗はどうなの?」
「あぁ……うん……ぼちぼち……かな」
ハハハとちかから視線を逸らす。
「それ全然進んでない証拠じゃん。いい、かな。もう後1年しかないんだよ。3年になったら大学受験のために勉強に専念しなきゃいけなくなるんでしょ?」
「わかってるよ」
そうわかってる……。だけど焦ったところで曲はできないのだ。
「それより再来週から定期試験だけど大丈夫?」
学校でも勉強より音楽が大事な私は、作曲用のアイディアノートを常に開いているため、正直あまり授業は聞いていない。
「ちか様今回もお世話になります」
目の前に座っている彼女に向き直り頭を下げる。
「よろしい」
そう言うと彼女は、机の中から1枚の紙と数冊のノートを取り出し手渡してきた。
用紙の方にはテストまでの勉強のスケジュールと彼女が作る教科毎のミニテストの日程が記されていた。
ノートの方はもちろんテスト対策ノートだ。
このノートで各科目の復習。そして常に学年1位の彼女が作ったミニテストをする。
それだけでなんと学年で上位の順位をキープすることができるのだからちか様様なのだ。
彼女と出会ったのは高校1年生の時からだが、私の音楽活動を応援してくれる大切な友人の1人だ。
私は小さい頃からずっとピアノをやっていたが、そんなに好きなわけではなくただ習いに行ってるだけだった。
しかし高校受験が終わった中学3年生の3月に動画配信サイトで”紺碧”という人の曲を聞いてからと言うものの、ハマりにハマり最初は紺碧の曲をピアノでカバーして動画配信サイトにあげていた。
それがいつからか自分でも作曲をするようになっていた。
高校1年生になった時に、将来は音楽で生きていくから大学には行かずに音楽活動に専念したいと親に言った。
しかし世間体を気にする母からは大学には絶対行くように言われた。
父も同じ意見だったようで音楽で生きていける人なんて本当に一握りなんだ。勉強してきちんとした大学に大学に行っておいたほうが後々後悔しないから、大学にはちゃんと行きなさいと言われた。
大学に行くなら音大に行きたいと言ったが、それなら態度で示しなさいと言われた。
両親からいくつかの条件が提示されていた。
”定期テストで学年10位内をキープすること”
”高校3年に進級するまでに音楽で何かしらの功績をあげること”
高校3年までにどちらかを達成できなかった場合
“高校3年に上がったらピアノは没収・勉学に専念すること”
音楽で功績をあげることについては、”オリジナル音源の再生回数100万回”、”何らかのコンテストで賞を受賞する”など実現不可能そうなことしか書かれていなかった。
それでもチャンスをもらえたことにただただ感謝した。
テストの順位に関しては、ちかのおかげでなんとか10位以内をキープすることができている。
曲作りに関しても、今はちょっと苦戦しているが、動画サイトにもUPしているし、週に2回弾き語りの動画を上げることにしている。
それでも私と同じように活動してる人は多くそうそう再生回数は上がらない。
残り9ヶ月。それまでに何かしらの成果を上げなくてはならない。
今のままでは条件をクリアできないと焦りが生じてきたもののどうすれば良いのか自分でも分からないでいる。
自分の曲をレコード会社に送ったこともあるが、返事をもらえた試しはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます