第40話 防衛
私はブラックが城に来ていると話を聞いた時、カクの言う通り戦争になるのかもと、不安で仕方なかった。
しかし、王様と一緒にブラックの言葉を聞いた時、不安は一気に消えたのだ。
私を見て、かけてくれた言葉は以前と同じであったのだ。
ただし、声を掛けてくれた人物はブラック本人ではなく知らない人間であったのに驚いたのだ。
話し方やその人物から出るオーラはブラック以外の何者でもないのはわかるのだが、不思議で仕方なかった。
やっぱり魔人はすごいと思ったのだ。
一安心はしたものの、ブラックから外の魔人たちがこの城を攻めてくると聞いて、すぐに問題解決に取り組まないといけなくなったのだ。
大きな問題は元シンブの魔人の種なのだ。
やはり、シンブが魔人であることが確定した事に、王様はショックを受けているようだった。
無理もない、今まで何十年も王室に仕えていた薬師であるのだ。
それも、取りまとめであり、王からの信頼も厚かった人物なのだ。
それが魔人であり、この城を攻撃しようとしているとは。
この城のことを熟知している者が敵であるのが問題なのだ。
種がどのくらい撒かれているか不明だが、魔力で成長した後全部を操作する事は不可能だとブラックが言っていた。
そう考えると、成長した生物の攻撃力は大したことがないと思われるのだ。
ブラックが言っていたのだが、1番心配なのはその生物が毒を撒き散らす事が出来ると言うことなのだ。
毒耐性を持たない人間への攻撃としては最も効果的なのである。
どこにあるかもわからない種を見つけるより、それに対抗できる体制を整える方が賢明なのだ。
私はだいぶ減ってしまった薬を考えてみた。
何か使えるものが無いかと。
・・・これしかないかも。
ひとつ、使えるものがあったのだ。
そして、私はシウン大将と計画を練ったのである。
人間にも出来ることがあると言うのを見せなければいけないのだ。
まず、城の非戦闘員は全て城の地下シェルターに移動してもらう事にした。
そして兵士の大部分は城の中ではなく、外に移動して待機してもらったのだ。
城の中の大広間に、兵士を含め私たち数十名のみが残るだけにしたのだ。
カクもシェルターに行くように促したが、怖がりながらもこの場にいることを希望したのだ。
ブラックがこちらに来るまでは外の魔人も動かないはず。
来てからでは種は育ち、魔人のしもべによって城の中の状況は外の魔人に筒抜けとなってしまう。
せっかくブラックが知らせてくれたのであるから、今のうちに完璧に準備を進めなくては。
私は最後の薬の準備をした。
闇の薬とは別に、いざと言う時に残しておいた薬なのだ。
それは、誰かの生命が危ない時に使おうと残しておいたものなのだ。
光の鉱石の粉末が少なかったので、一人分しか作れなかったが、さっきヨクからもらった物があるのだ。
これを使うと私が元の世界に戻るための物が無くなってしまうが、今ここで使わなければきっと後悔する。
貴重なのはわかっているが、また採掘してもらうのを待てばいいわけで、今はそんな事を考える余裕はなかった。
そして、ヨクから貰った物を使えば、ここの広間にいる人間の分くらいは賄えるのだ。
私は大事な薬を、闇の薬を作った時と同じ丸いカプセルのようなものに詰めた。
今回も矢で射抜いてもらうことにしたのだ。
ちょうど準備ができた時、シウン大将からブラックが来たことを伝えられた。
シウン大将と外の状況がわかる鏡を見ると、ブラックが城の正門に現れたようだ。
横には初めて見る2人の魔人を従えているようだ。
作戦開始であるのだ。
シウン大将が大広間にみんなを集めると、この広間のみを囲む結界を作ったのだ。
城全体に張っている結界の簡易版なので、強力な魔力であればすぐに解除される可能性があるのだが、とりあえず、魔人のしもべの攻撃なら問題ないと思われるのだ。
結界が上手く機能しているようなので、私は先程作った薬をこの結界内に充満させることにしたのだ。
ただ、今までの経験や漢方薬の作用などを考えると効果持続時間は4時間程度と思われるのだ。
その間に全てが終わるといいのだが。
魔獣との戦いの時にもお世話になった弓の名手に、投げた薬を射抜いてもらったのだ。
射抜いてもらうと、パーンと大きな音がして金色に光る粉が部屋中に舞い散ったのだ。
その後すぐに舞い散った光は自分たちの中に入って来たのだ。
この薬は闇の薬でも使った漢方薬で、光の鉱石の粉末を指示用量入れると、完全回復となるのだ。
私があの古びた書物を見た時、1番驚いた効果なのだ。
この量で完全回復までに行くかはわからないが、 闇の薬はすでに効果がわかっているので、正反対の薬も絶対に効果はあると思うのだ。
そして、前もって薬を吸収しておけば、魔人や魔人のしもべの攻撃にも耐えられるはず。
その効果のあるうちに少なくとも魔人のしもべを葬るのだ。
魔人達にはブラックが対応する話になっているが、私たち自身も出来る限り、自分の身は自分で何とかしなくてはいけないと思うのだ。
光の粉が自分の中に入ってくるのを感じた後、こんな状況であるにもかかわらず、とても気分は落ち着き絶対に成功させる意欲が増したのである。
さて、準備は整った。
シウン大将は城の結界を一時的に解除したのだ。
そして、正門を開け、ブラック達を迎え入れたのだ。
すでに城を囲んでいた魔人達は静かにその光景を眺めているように見えたのだ。
しかし、やはりそう見えるだけであったのだ。
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