第41話 毒

 シウン大将が正門からブラックを招き入れ、部下の魔人も一緒に王様のいる広間へと案内している時だった。

 今まで見つけることが出来なかった種が、魔人のしもべとなるべく、成長し始めたのだ。

 ブラックが入る時に結界を解除した途端、予想通りプランツが城の中にある種に向けて、魔力を送ったのである。

 人間の腰くらいまで成長した食虫植物のような生物は蔓を手足の様にうまく使い動き出したのだ。

 やはり、かなりの数が仕掛けられていたのだ。

 ブラックから聞いた話によると、その生き物を通して周りの状況が魔人に伝わると言うことだ。

 そう、城の様子は全て見られているのだ。

 広間の方にもウネウネとした蔓を使いながら何体かの生物が現れたのだ。

 蔓を使って攻撃を仕掛けては来るが、戦闘能力は大した事はなかったのだ。

 城の中の兵によって何体かは戦闘不能にされていた。

 しかし、多くが私たちがいる広間に向かってきている様で、次から次と怪しい音を立てながら近づいてくるのがわかるのだ。

 この広間に結界を作ってあるが、外の魔人に悟られないように、兵士たちは結界から出てその生物に向かっていったのだ。

 そして魔人のしもべである生物が急に動きを止めたのである。

 すると、口のような部分を広げ、怪しい液体を噴き出したのである。

 多分これが話に聞いていた、毒物と思われるのだ。


 そして兵士たちが魔人のしもべを消滅させながらも、広間の者達は次々に倒れたいったのである。



          ○

           

          ○


          ○


 城の外でも動きがあったのである。


 ブラックが城の中に入ったらすぐに、自分が撒いた種に向けて魔力を送ったのだ。

 あっという間に種から、肩に乗った相棒と同じような生物に成長していったのである。

 やはり結界が解除されたようで上手く種を成長させることが出来たのだ。

 これで城の様子もうかがうこともできる。

 プランツにとっては長年慣れ親しんだ城であるため、断片的な情報でも手にとるようにわかるのだ。

 どうも、大広間に人間どもが集まっている事がわかった。

 ブラックを相手にする前に、まずは人間をどうにかするのだ。

 そして、全てのしもべを広間に向かわせたのだ。

 ある程度の数が集まったところで、毒物の攻撃を仕掛けてみたのだ。


 グラウンには城の周りの地形を変える指示を出した。

 グラウンは手に力を込めて城を睨むと、大きな音を立てて地面が裂け始めたのだ。

 城の周りに深い崖を作りその外側には鋭い岩山で囲んだのだ。


「プランツこれでいいか?」


「ああ、上出来だ。

 お前は予定通り洞窟に向かってくれ。」


 これで簡単には人間どもは城から逃げることが出来ないのだ。

 そして、我々は二手に分かれた。

 グラウン、ストームと一部の魔人は洞窟に向かったのだ。

 そして私と残りの魔人達は城の門の前に瞬時に移動したのだ。

 結界は解除されたままであり、城の中にすんなり入ることが出来たのだ。

 そして、しもべから大広間の状況を知ることが出来た。

 広間に向かったしもべ達の大部分は人間どもにやられてしまったが、残された者からの情報で、人間達はみな床に倒れ苦しんでいる事が伝わったのだ。

 さすが、シウン大将の率いる部隊だ。

 しもべ達はほとんど倒されてしまったようだ。

 まあ、いつでもしもべは作ることが出来るので、全く問題ないのだが。

 しかし、人間も毒によるダメージを受けているようで、予想通りであったのだ。

 よく見ると、倒れている者の中に、オウギ王やヨク、あの娘も見つけることが出来た。

 少しだけ私は胸に痛みを感じたのだ。

 ・・・この痛みは何だろう。

 少し長く人間でいすぎたせいだ。

 私は考えるのをやめたのだ。

 今はプランツとしてやるべき事があるのだ。

 それにしても、・・・何と人間は弱い者なのだろう。

 私たちは大広間に向かって歩き出した。

 途中でしもべからの情報が得られなくなったので、大広間にブラックが着いたと思われるのだ。

 まあ、今頃は私の考えもわかっている事だろう。


 それにしても、少しだけ引っかかることがあるのだ。

 人間の兵士が城の中に少ないのだ。

 城の外で待機しているのかもしれないのだが、広間以外に兵がいないのが気になったのだ。

 まあ、王やあの娘が手の内に有れば問題は無いのだ。


 大広間に着くと、ブラックとその部下であるネフライトとトルマが一緒に立っていたのだ。

 そして、シウン大将が大きな剣を片手にこちらを睨んできたのだ。

 どうも、最後のしもべはシウン大将にやられたようだ。


「これはこれはブラック様。

 人間の王との話の後に、我々の元に来てくださるというお話でしたが、待ちきれなく参上させていただきました。

 王との話は終わりましたかな?」


 倒れているオウギ王を見ながら、私はブラックの元に歩いて行ったのだ。

 

 すると、部下であるネフライトがブラックの前に出て攻撃の態勢を取ったのだ。


「まあ、ネフライト待て。」


 ブラックはネフライトに下がるように伝えたのだ。


「私が人間の王と話をしようと思い、ここにきた時にはこの有り様だったよ。

 君のしもべが何体もいたようだが、説明をいただきましょうか?」


 ブラックはいつも通りの冷静な口調で話し始めたのだ。

 それも微笑みながら話し出したことが、プランツは不気味に感じたのだ。

 

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