第27話 魔人の国の事情

 ブラックは、クオーツを引きずりながら洞窟を出て、自分の国がある世界に戻ってきた。

 洞窟の外にはネフライトとその部下たちが待機していた。

 ブラックはネフライトにクオーツを引き渡すと、魔法が無効化される牢に入れておくように伝えた。

 後日尋問を予定しているので、少なくともそれまでは生かしておく必要があるのだ。

 

 ブラックが治める魔人の国は、王を頂点にして魔人としての力があるものが高い位についていた。

 もちろん、力が弱くても優秀なものはそれなりの地位を与えられていたが、やはり力が強いものには劣るのであった。

 そのため、幹部になるには優秀でもあり、魔人としての強さも備えたものしかなることはできなかった。

 それも、誰もが認める強さでなければいけないのである。


 魔人たちには持って生まれた能力と、その後の鍛錬などによる戦闘能力の高さで強さが判断できるようだ。

 魔法を使う能力に秀でているものもいれば、身体能力が高いものや攻撃力、防御力が高いものなど様々であった。

 

 確かに力の強いものが上位にいる世界ではあったが、正当な理由がなく、自分より弱いものを虐げることは、かたく禁止されていた。

 それに反したものは、王からのかなりの処罰を言い渡される事になっていた。

 もちろん、正当な理由があれば、その者を消滅させる事も許されていたのだ。

 その正当な理由の判断基準は、全て王であるブラックの考え次第であったのだ。

 

 この魔人の国では、ブラックの優秀な部下として、5人の魔人が仕えていた。


 1人はブラックの優秀な執事でもあるネフライトである。

 薄緑色の髪の浅黒い肌の魔人で、細かい事に気を配れる魔人であった。

 そのため、ブラックの秘書のような立場であり、スケジュール等は全て彼に任せていた。

 戦闘能力もとても高く、魔人ではあるが魔法の力よりも、自分の身体能力を高める事に秀でており、いざとなれば、ブラックを守る壁になる事が出来たのだ。


 2人目は赤髪のスピネル。

 身体は細身であるが、炎を操る魔法にたけており、広範囲な攻撃などを得意とする魔人である。

 少し短気な部分があるが、とても陽気でいつもブラックを楽しませてくれる存在であるのだ。


 3人目は深い青色の髪と瞳を持つユークレイス。

 冷酷な部分はあるが、冷静で何事も慎重に事をなす魔人である。

 精神支配を得意とし、格下のものは彼に嘘をつくことは絶対に出来ず、尋問を行うには適任者であった。

 もちろん、同等以上の魔人にはレジストされるため、相手によって効果の違いが大きいのだ。


 4人目はトルマ。

 電気を自由に使う事ができ、戦闘においては相手を麻痺させる事により優位に戦いを進める事が出来る。 

 また魔人でありながら、剣や槍など武器の扱いに詳しく、それによる戦いを好むようだ。


 5人目は長い金髪で、褐色の肌のジルコン。

 唯一の女性の幹部である。

 大地や、植物など自然のものからエネルギーに変えて光の力を作り出す事が出来る魔人である。

 ブラックと同じくらい昔から存在する魔人であり、このジルコンの作る光は、他の魔法を無効化する働きがあるのだ。


 そして、王であるブラックだが、人間と共存をしていた時代から王であり、古くから存在する魔人である。

 と言っても、まだまだ高齢でもなく、見た目は青年のように見える。

 本来の寿命は不明であるが、衰えている要素は一つもないようだ。

 しかし、王という立場に少し飽きてきたようで、代わる者がいれば、いつでも交代してのんびりとした立場になりたいと思っていた。

 しかし、自分を超える魔人が出てこないため、仕方なく王をやっているという訳だ。


 ブラックは全てのものを消滅し、無に変える魔法の力を持っており、群を抜いて強かったのだ。

 幹部の中で対抗できるものといえば、ジルコンくらいしかいなかった。

 しかし、ジルコンの力には様々な自然の条件で強さが違うので、やはりブラックが最強であったのだ。


 また、ブラックは色々なものに興味を持つ性格で、人間で使われている武道や武術なども極めており、身体能力も高い魔人でもあった。

 そして、本を読むことも好きで博識でもあるのだ。


 そのような性格だったので、人間そのものに興味をもち、以前は問題なく共存出来ていたのであった。

 

 そんな、強いブラックではあったが、国に揉め事が起きるときは、幹部を招集して皆と話し合いを持っていた。

 もちろん、最終決定はブラックなのだが、独裁者というわけでは無かったのだ。


 そして今回のクオーツの件も皆を招集する事にしたのだ。

 ただ今回はいつもと違い、ブラックもかなり慎重に事を進めたのだ。

 このクオーツの後ろには、幹部の誰かがいるかもしれないのだ。

 


 

 

 

 

 

 

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