第24話 魔人クオーツ
どうして、あのクオーツが洞窟を復活できたのだろう。
私はしばらく考えてみた。
復活させるには強力な封印を解く力が必要なのだ。
もちろん、それだけでは無いのだが。
クオーツが最近、城をうろついていたのは知っていた。
正直魔人としての強さを考えると、気に止めるほどではなかったのだ。
つまり、クオーツだけで封印を解くことは不可能なのだ。
誰かのやはり入れ知恵か?
手伝った者がいるはずなのだ。
それも、クオーツより格上の、私が信頼している者たちの誰かしかいないのだ。
だとすると・・・。
「ブラック様。そろそろまずい状態になるかと。」
ネフライトが報告に来たのだ。
クオーツが魔獣を2体放ったことはわかっているが、人間たちもなかなかであったようだ。
どちらも人間に捕獲されたようで、そろそろクオーツ自身が手を出す頃であろう。
とりあえず洞窟へと行くしかないか。
「では、私が向かうので、皆は手を出さないように。」
私はネフライトから言われた場所に向かったのだ。
どうやら、クオーツは高い岩山の中腹に洞窟を復活させたようだ。
かなり接近しないとわからない場所であった。
よく、ネフライトは見つけられたものだ。
さすが、細かい事にも目がいく魔人なのだ。
洞窟の入り口に着き、中を覗き込んだ。
かなり久しぶりに見るその洞窟は、暗く静まりかえっていた。
自分の歩くカッカッカッという音だけが響いた。
少し進んでいくと、先に光が見えた。
明るさとともに、段々と、騒がしい音や声が聞こえてきたのだ。
500年ぶりに戻ってきた世界。
色々なことが、一気に思い出されたのだ。
だが、それに浸る時間はなかったようだ。
ちょうどクオーツが人間たちに精神支配に近い魔法をかけているようだ。
まあ、自分の手を使わずに相手同士を戦わせて高みの見物をするあたり、悪趣味な小物の魔人がする事だ。
さて、支配を解除しに行くか。
そう思った時だった。
光の粉雪のようなものが周辺に舞い散ったのだ。
その粉末が触れた人間たちは魔法が解除されたように静かに倒れ込んだのだ。
以前も見たことがある光景に感じたのだ。
まさか、ハナ?
いや、ハナは人間だ。とうに寿命が尽きているだろう。
ただ、彼女の薬が受け継がれているのかもしれない。
命が尽きても、その精神や技術を受け継ぐことが出来るのが、人間なのだ。
やはり人間とは面白い生き物である。
それにしても、クオーツはかなり頭にきたらしい。
今度こそ、自分で対処するかのようで、破壊光線のようなものを出すつもりだ。
クオーツにどんなスキルがあるかは何も調べて無かったが、まあ、問題なくレジストできそうだ。
つまらない事に、予想の範囲内の魔人でしか無いのだ。
私はそっと後ろからクオーツの手を掴んだのだ。
「誰の許しを得て、ここに来ているのかな?」
私は手を掴みながらクオーツに話し始めた。
正直ここで抹消することは出来たが、裏にいるものを探さなくては意味がない。
私はなるべく冷静につとめた。
だが、懐かしい気持ちにさせてはくれたが、やはりこの洞窟の勝手な復活は許すことが出来ないのだ。
そう思うと、本当に力が入りすぎて、腕を消滅させてしまった。
まあ、魔人の場合、人間と違い回復は可能なので、このくらい痛めつけた方が、良い薬になるだろう。
そう思っていたが、案外この魔人はしつこい性格だったようだ。
私がちょっと、目を離した隙に、また攻撃をかけるとは大馬鹿者なのか。
私を甘く見ているということか。
しかし、少しは人間たちにダメージがあっても仕方ないか。
その責任をこのクオーツに取らせることが出来るのだから。
別に私は人間の味方というわけでもないのだ。
そう思った時だった。
黒いボールがクオーツに投げつけられたのだ。
それを見たとき、とても危険なものであると感じたのだ。
魔人でさえ、かなりのダメージを受けるものであると、直感で分かった。
それに、はるか昔に同じような物を見たことがあるのだ。
あの黒煙。そして、この匂い。
ああ、ハナの作った薬に似ているな。
そう思った時、黒髪の大きな黒い瞳を持った、他とは違う姿をしている少女が目に映ったのだ。
ああ・・・ハナではないのはそのオーラからわかるが、その少女はハナの面影があったのだ。
黒煙に包まれたクオーツはみるみる痩せ細り、動くことも困難のような状態になった。
かなりの生命力の低下が見られたのだ。
まあ、このまま消滅することは無いだろうが、元に戻るには魔人であってもかなり時間がかかることだろう。
尋問できる程度の力が残っていれば、こちらとしては、問題ないのだが。
ハナの面影がある少女と話がしたかったが、今はクオーツをどうにかしなくてはいけない。
残念だが、私はこの動くのもままならない魔人を引きずって、元の世界に戻る事にしたのだ。
人間たちに、また来る事を伝えて。
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