第3話 恋

僕は大学時代に好きだった奈緒の顔が浮かんだ。


彼女とは研究室が一緒で、よく一緒に実験をした仲だ。


しかし、社会人になってからはブラック企業で僕は疲弊してしまい、連絡する間も無く、いつからか疎遠になっていた。


奈緒に連絡してみよう。


僕はスマホに入っているLINEアプリを起動させて奈緒を探した。


かなり下の方までスクロールしてようやく奈緒を見つけた。


「久しぶり!元気してる?」


僕は特に気が利いたことも言えないのでシンプルなメッセージにした。


送信する前にウンコロガシに返信の来る確率を上げるようにお願いした。


つくづく自分はチキンな奴だと改めて思った。


すると、数分もしないうちに「超久しぶり!元気だよ!そっちはどう?」と返信が来た。


僕は嬉しくなって奈緒とのLINEのやりとりを楽しんだ。


しかし、奈緒とのやりとりの途中でショックな事実が発覚した。


奈緒は既に結婚をしていたのだ。


しかも、その相手は研究室時代に僕のことを馬鹿にしていた清水先輩だった。


奈緒は今は清水奈緒なんだ。僕は凄く凹んだ。


清水先輩は大手の自動車メーカーに就職し、バリバリ活躍しているようだった。


僕とは大違いだ。


彼は研究も地道にやるタイプではなかった。


教授や准教授に気に入られ、上手いことやって修士論文を完成させたくちだ。


そんな奴が勝ち組なんて僕は許せなかった。


地道に実験した僕よりも彼の方が良い人生を歩んでいる。


しかも、あの大好きだった奈緒と結婚している。


僕はイラッとしてスマホを壁に投げつけた。

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