8回目20
続いて一行は二つ目のエリアに入った。
第三王子はむすぅーとしている。リンゴのようにほっぺたを赤くして膨らませている。
メイドや侍女があやしても態度が変わらず、見かねた第一王妃が窘めると、ますます意固地になった。
今まで自分の思い通りにいきてきたんだなと俺は思った。第三王子なので逆らう人もいなかったのだろう。今は子供だからいいが、将来が心配だ。
第二エリアはリアルウィザードリングハリーポッ○ーの世界。
ユニバーサルスタジオジャパ○だといいたい人もいると思うが、異世界なのでそこのところは大目に見てほしい。
町並みは中世ヨーロッパ風で、所々に魔法杖型の魔道具が設置されており、握って言葉を唱えれば、起動する方式だ。
例のバタービールも忠実に再現している。
ここの目玉は魔法杖を起動した雪のホログラムと時計台、そして投影型魔道具を使っての○リーポッターを再現したアトラクションだ。
この世界では技術はそこまでなかったが、俺にはアルカナの知識があるため作れた。
滅茶苦茶大変だったけど、作り終わったときは、親方一同と肩を抱き合って号泣したけど。
このエリアも大好評だ。子供たちは魔法杖を使ってはしゃいでいるし、大人達はバタービールのおいしさに驚いたり時計台を見て驚いたり、アトラクションを親子で体験したりしていた。
ここに興味を示したのは第四王女。
まん丸な目をきらきらさせ、杖は振ったり、雪のホログラムに手を開き感動していた。
それは、子供の頃スキー場でよく見られた光景。
試行錯誤したかいがあった。
俺は今すごく嬉しい気持ちだ、豚ピーうれピーだ。
「このエリアほんとぐだんねぇ」
その雰囲気をぶち壊したのが、おなじみのくそ馬鹿第三王子だ。
「あっー」
第四王女が持っていた杖を取り上げ、地面にたたき落とし壊そうとする。
「駄目ですよマーシュ様」
足で踏みつぶそうとしたところをすんでの所で京夜が第三王子の手を握り阻止する。
第四王女は目をうるうるさせ、杖を拾う、どうやら壊れたみたいだ。
「う~、杖ちゃんが」
ひっくひっくと泣く呼び動作を行う。
やばい。
俺は慌てて第四王女に駆け寄る。
「ぬいぐるみしゃん」
もう少し後で、披露する予定だったが、ここでもいいだろう。
京夜も頷いていた。何事にもパプニングはつきものだ。
縫いつけられたポッケから出したのは特性の魔法杖、それに魔力を通す。
あたり一面が暗くなる。
そして俺は上を指す。
「あ~キラキラ~」
プラネタリウムの魔道具。アルカナの知識にあった魔道具の一つで、上級付与魔術と最上級建築、さらに中級鍛冶になって初めて作れたものだ。それでも二百本ぐらい失敗して偶然一本成功した代物だ。
文字を刻むことによって術式が作用し、刻んだのは『闇』『星』『星座』だ。
暗闇の中に星々が輝き、光りの線が星座を繋ぐ。
効果が切れるまで約十分それはもう幻想的な世界だった。騒いでいた子供達もただ黙ってその光景を目にしていた。
夢から覚めたように元の景色に戻る。
第四王女は、着ぐるみの足を引っ張り、杖を欲しそうに俺を見ていた。
本音を言えば、作るのが面倒なので、断りを入れたかったが。
「これはあげるだ」
頭をぽんぽんと撫で第四王女に渡す。
対外的にも立場的にも流れ的にも、ここであげるという選択肢しか無かった。
俺は空気を読む男だ。
だから、京夜や冒険者、行商人や従業員の方々、そんなに怖い顔してこちらを見ないで欲しい。
「ありがとうぬいぐるみしゃん」
向日葵のような笑顔を向け、第四王女はとことこと母親の元に向かう。
やっぱり幼女は笑顔が一番だ。
イエスロリータノータッチの気持ちが分かった気がする。
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