8回目16

俺の口はチャックウィルソンだと誓ったのに、ティッシュの様にペラペラで軽かった。




 俺の心は鋼ではなく、ノミだった。




 拷問への恐怖から全部げろってしまった。俺の事、死に戻り、この世界や平行世界のこと、知っている魔法やスキルの知識、史香達や野子達の事。




 ステータスや人となりまで俺が知っていることすべて話した。




「これで終わりか」




「ほっほんとうに終わりだ」




 京夜は質問などしなく、脅すように終わりかどうかを聞いた。




 そして考えを纏めるかのように、五分ほど目を閉じ、じっとしていた。




 正直生きた心地がしない。




 映画でも小説でも漫画でも、全部はいた後の人物は悲惨でしかない。




 主人公効果でどうにかならないだろうか。これが仮に主人公ならば、ヒロインや仲間が助けてくれる。


しかし俺にはヒロインは0で仲間は旅立っている。




 コルナはいるが、べろべろに酔っぱらって、これないだろう。




 ということは、京夜のさじ加減で決まる。だから、俺はびくびくしながら、京夜をいらだたせないよう黙っていた。




「豚が言った事は狂人の戯れ言みてーだが、あんだけ脅して嘘はく勇気もねーみてーだし。一応筋は通ってるか、しゃーねーな豚、下僕一号してなら生かしてやってもいいぜ、ありがたく思え」




「おっお願いしますだ」




 一も二もなくみっともなく飛びついた。だって仕方ないじゃんか、命は何よりも重い。




 京夜は俺の縄をほどいて解放してくれた。




 良かった、何とか乗り切った。縄の後をさすりながら、俺はほっとしていた。




「それで、なんだ、来年二階堂先輩は来るのかよ」




 京夜は顔を赤らめいじいじしていた。




 可愛いとか言ったら殺されそうだ。




 他のルートはともかく、このルートでは、二階堂が来ることは確定していた。




「そうだだ。知り合いだが」




「その特徴は二階堂先輩で間違いねー、豚も知ってると思うが、俺は伊集院グループの御曹司だ。だからそういう人部が通う学校にいる、二階堂先輩は二つ年上の先輩だ」




 なるほどと俺は思う。ちかよりがたい京夜と何故あんなに仲が良かったのかを。




 京夜が唯一気が許せる人物が二階堂だけだった。




 知り合いが居るのと居ないのとでわ安心感が違う。それが信頼している先輩だと尚更だ。




 京夜の言葉の端々にそれが伝わってくる。




「あのことは知ってるだが」




「学校では男だって通しているし、二階堂先輩もしらねーよ。つか豚、俺は忘れろって言ったよな」




 安堵からいらぬ言葉を口走ってしまった。




 良い笑顔で、京夜はトンカチを手に持つ。




「許してくれだぁーーーー」






 その夜、この家には叫び声が響きわたっていた。




















 惨劇完了
































(完)




















































 ということはなく、何とか生きていた。たんこぶは五つほど作ったが。




 あれから三ヶ月が経過した。




 京夜は口が悪く暴力的だが、性格が悪いというわけではなく、それしか知らない子供だった。やってもらいたい事を指摘すれば、口では罵りながらもやってくれて、コルナもそれが分かったらしく、受け流している。




 本来は優しく内向的な性格だったのだろうけど、ねじ曲がってしまったと思う。金持ちって恐ろしい。




 ダズニーランド計画は、トップが京夜に変わり、駄目なところを作り替え、後二ヶ月ほどで完成する。




 やっぱり京夜は凄かった。さずが、伊集院グループの御曹司。ザルに考えていた完成後の構想をきちっと商業ベースに持っていき、商業ギルドを使って、宣伝も効果的に行っていた。オープン一週間前にこの国の王族を筆頭にお偉い様方がいらっしゃるらしい。




 その過程で権利のことで色々と揉めたが、京夜がすべてをねじ伏せ、どうにか俺達に権利があることを認めてもらった。




 普段の京夜はあんなんだが、ビジネスモードの京夜は隙がなく目上に対し敬語もしっかりと使え、話術も一級品だ。




 なぜ普段からそうしないのかと言ったが、返答は『あん、そんなもんめんどくさいからに決まってるだろ、ダーブーが』だった。確かにいつもそんな口調だったら肩が凝って疲れてしまうなと。ダーブーはだら豚の略称で、ブーは普段俺を呼ぶときの相性だ。




 今日は京夜が来てからの俺の普段の一日を紹介しよう。




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