8回目14
コルナは愛想笑いで受け流しているが、こめかみの血管がぴくぴくと動いていた。
コルナは村で一番の美人だ。そんなこと言われたこともないだろう。
殴り合いの喧嘩にならず俺はほっとする。
コルナは受付の立場を弁えていた。
「さっさっと続きをいえ、ブスノロマが」
浮きだった血管の数が増えた。
その後も。
「説明しろブスクズ」
ぴきっぴきっ。
「これはどういう意味だブスゴミ」
ピキピキピキピキ。
「長いんだよこのブサ イクヨが」
京夜は散々コルナの事をこき下ろし、満足そうに帰って行った。
俺の事は視界にも入れたくないようで、いないものとして扱われた。
残されたコルナは、血管から血が出そうなぐらい浮き出てて、頭から湯気がででおり、顔は般若だった
フォローしたかったが、あまりの表情に怖くて話しかけられない。
ある意味で、平然と暴言を吐いて去っていった京也を尊敬する、
従妹にゴミを見るような目で見られたが、ここまで酷い表情ではなかった。
「ねぇブータン」
幽鬼のような声でコルナが俺に話しかけてきた。
ひっ。
俺は思わず後ずさりそうになる。髪の毛がもう少し長ければ、立派な貞○だ。
「なっなっなんだか」
ぶるっちまって、声が震える。ホラー系は苦手だ。
「私って、そんなにブサイク」
「むっむっ村一番の美人だな。こっこっ恋人のビリーもそう言ってるだがよ」
ビリーとは、コルナの恋人で行商人見習いだ。
俺がそう言うと、コルナの表情が幾分か収まった。
「そう、そうよね、ビーもいつも綺麗だねって言ってくれてるし、村一番の美人よね」
良かった、自分を取り戻した感じだ。
「ブータン、今日はもう閉めて、飲みに行くわよ」
俺は断る術はなく、はんば強制的に連行されていった。
深夜まで飲まされべろべろになった俺は、千鳥足で家に戻ると、サヤの家に明かりが灯っていた。
ひっく、誰もいないのに明かりついてるなー、おかしいなーおかしいなーお化けの学校かー。
まともに思考できなく、お酒で気分が高揚していた俺はサヤの家に入る。
怖くなんか内蔵。
お化けの出所を探る。
水が流れる音が聞こえる。
風呂か。
俺も風呂に入りたいぞー。
飲み過ぎてとち狂ったのか俺は、移動している途中に服を脱ぎ散らかし、裸の状態で風呂を目指す。
そして、躊躇することなく大浴場に入る。
んっ・・・。
その人物は大浴場にある、洗い場でシャワーを浴びていた。
あれっ、無いぞ。
ある物がない。
あれ、あれが膨らんでいる。
男にはない膨らみが。
その人物と目が合う。
やあ。
俺はにこやかに手を振る。
「きっ」
「きっ?」
「きゃぁぁぁぁぁぁーーー」
置いてあった桶を投げられ、俺の頭に命中し、意識を失った。
そしてすっかり酔いが醒めた俺は、目の前の人物に土下座をしている。
今振り返っても、いくら酔っぱらっていたとはいえあれはないなと。
変態の上、ド変態だ。地球で同じ事をすれば、間違いなく捕まる。ここでも衛兵を呼ばれてもおかしくないレベル。
それぐらいの愚行だ。
その人物は無言で、俺の頭はげしげしと蹴る。
ステータスが上がっているのでそんなに痛くはなく、痛気持ちいい感覚だ。
「わっ悪気はないんだな。おっおらの作った家に灯りがあったから、見に来ただけなんだな」
蹴りの速度が上がる。あかん、それは犯罪者の言い訳だ。言葉のチョイスに失敗した。
その人物の事を考えると仕方がないと俺は思う。
宿屋は、水回りは改善し、トイレはある程度改善したが、未だにアンモニア臭がきついし、部屋は衛生的ではない。
おそらくとらぶって、宿屋に泊まらなかったんだろう。
そうすると、野宿しかないが、それは避けたい。俺でも野宿は危険だと思って馬小屋に泊まっていた。
それにプライド的に野宿は絶対嫌だったのだろう。
そしてこの家を見つけて、住もうと思った。
思えばその人物の歳は十五歳だったか、真夏の大冒険ならぬ、異世界一人暮らし生活だ。
なに不自由ない上流階級の人物が一人異世界に来たら戸惑うのも無理はない。
虚勢を張り、自分を誇示するのも。
性別を偽っているなら尚更だ。
そう、ホントのリアル伊集院。
彼の正体は、女の子だった。
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