8回目11

三週間が経過した。




 あれから野子はすぐ帰ってきた。やはりというかなんというか、場所が分からず英雄ギルドに捜索依頼を出し、ひとまずサヤの家に住むことになった。




 捜索依頼を出した二人はすぐに見つかった。ガンマンはこの国の首都、真祖はウォタルの首都。どうやらあっちでも目立っているらしい。




 あっという間にレベルを十にあげた野子は昨日。




「ブータン先輩、ノコノコがみんなを連れてきますよ~、乞うご期待、ばいんばいんきーん」




 と言って飛行機ポーズで旅に出た。




 嵐の去った後というか、今はすこぶる平和だ。




 『モンスター大量虐殺事件』を筆頭に『怪奇! 顔が消えたノコノコ事件』『空に還ったノコノコ事件』『変身!ノコノコ戦隊ノコレンジャー』等々、毎日なにかしら騒ぎを起こし話題に事欠かなかった。




 子供達のハートをがっちりと掴み、見送りには村の子供達全員が来ていた。




 俺はどうかって、戦隊物の怪獣役をやらされ、今じゃ子供達のヒール役、会えば石を投げられ、殴られ蹴られる。




 これパワハラだよね、訴えるぞちくしょう。




 子供だから痛くはないが地味に心が抉られる。サヤが懐かしい、早く帰ってこい。




 ダズニーランド計画は順調だ。まさに夢の国と自画自賛する。一年後には完成しそうだ。




 完成したら、子供達の人気が鰻登りになること間違いない。




 むんすむんすと鼻息を荒くする。フラグ臭が濃いが今は考えない。




 そうそう、あれから、サラ達から英雄ギルド経由で手紙が来た。




 史香の文字で近況が書かれていた。




 5回目のサラの情報の通り、この国の王都で永遠、ファイラの端で真理と合流したこと、六人パーティーとなり、Bランク冒険者になったこと、四人全員の貢献度ポイントがゴールドになったこと、自力をつけ、二階堂が来る頃に帰ってくるむねがかかれていた。




 はぁ~後約三年か、長いなぁー。三年寝たろうになりたい今日この頃の俺。




 と言っても、考える事や、やることは山積みだ、それこそ富士山やエベレストの如く。




 ダズニーランド計画、村にある各家々の治水工事、村人のお悩み相談、英雄ギルドの書類仕事。




 特に英雄ギルド関係は、もはやループ間のストックがなく、かなり時間を取られている。




 二十四時間戦えますかの精神で、ブラックも真っ青な働きぶりだ。




 しかし、しかーし、それで痩せないから、人間の体は不思議だ。痩せない呪いにかかっているんじゃないかと思うぐらい、ぴくりとも痩せない。




 1回目はあんだけ太ったのに。




 理不尽だと思うが仕方ない。チ○ンさんより食べ、酒も飲むからな。




 そりゃ痩せないよなと思い直す。




 痩せたらイケメン・・・・・・すいません、嘘こきました、痩せても六枚目がデフォの顔でした。


 ハーレムが欲しいと思う今日この頃の俺。






 レベルに関しては、まぁ、なんだその内あげるよその内。その内と言って、あげる気が全くないパターンのやつや。




 ほんとにレベルをあげる気はある。知力は限界に到達したし、1でいる利点が少ない。




 いよいよ困ったら、レベルをあげようと棚上げする。




 逃げだと思うが、この話はまぁ置いとこう。頭の何光年か先に。




 そうそう、ビックニュースがある。




 先日の話だが、とうとうコルナが将来結婚する旦那さんと出会った。




 旦那さんは、行商人の見習いで、たまたま手伝いとしてきていた。




 ばったりと会い、見つめ合う二人。木の陰から伺う俺。




 ストーカーかよ俺は。




 とまぁ、それは冗談で・・・・・・ほんとに冗談だからな。実際は二人で備品を買いに行商人のところに向かった所で、二人は出会ったというわけだ。




 放置プレイはなれているよ。




 女性の行商人見習いは来てくれないのかと嘆く。




 ちなみに、行商人とはツーカーの仲だ。ダズニーランド計画には出資してもらってるし、いろんな物資を融通して貰っている。




 その分、行商人からの依頼は優先的にこなしている。




 行商人の格好も変わった。昔は布の動きやすい服だったのに、今では貴族御用達かくやの品のある服装。ああ、儲かっているんだなと一目でわかる。




 なんでも、各国に支店を置く大商人になったとかで、従業員も百倍ほど増えている。




 そんな行商人は週に一回は来ている。昔は月に一回で今の方が忙しいにも関わらず。




 理由はわかっている。




「ブータンさん、いやブータン様々、毎度ありがとうございます。いやぁー、この間ブータンさんに作っていただいたテント型サウナとオーガニック化粧品セットの売れ行きが好調でして、王都ではプレミア価格の奪い合いとなっており、うれしい悲鳴です。つきましてわ、一週間後に各百ほど下ろしていただきたいのですが」




「分かっただ、やっとくだ」




「いやぁーありがとうございます」




 行商人は手を握り感動している。おっさんに握られても全く嬉しくない。




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